この世には、「伝説の安心感」というものが存在するらしい。
らしい、というのは「伝説」だからだ。私はそれを見つけるため旅をしている。

旅の途中、一人の女性に出会った。
夫が戦争に行き、半年以上経つそうだ。
「心配だな」
「そうね。でもきっと帰ってくるわ」

一年後、私はまだ旅をしていた。
そうえいば、あの女性は元気だろうか。
訪ねると笑顔で出迎えてくれたが、夫はまだ帰らないらしい。
「信じて待つわ」
私は彼女が「伝説の安心感」を手に入れられるよう願った。

三年後、久しぶりに彼女の元を訪ねた。
「あら。お久しぶり」
寒かったでしょう、と温かい紅茶を淹れてくれた。

五年後。彼女の元を訪ねた。
おかしい。呼び鈴を鳴らしても返事がない。

「マリーさんの知り合いかい？」
一人の老婆に声を掛けられた。
「はい」
「ご主人が戦地から帰ってきて、数年前故郷へ引っ越したよ」

ああ、そうか。私はその場を後にした。

さて、どこへ行こうか。
行先を失った私は、ただ歩き続けている。

（410字）

たらはカニさんの下記企画に参加しております。
今週は「伝説の安心感」。

勇者から甘酸っぱい青春まであって、とても楽しめました〜
ドラクエは6が好きです。