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「第ゼロ感」を超えるバスケ最強BGMは今後現れるのか

まずは男子日本代表、パリオリンピック出場決定おめでとうございます💮

高校バスケ派ですが、代表戦は”トムさんが監督だから”欠かさず見ています。本当にトムさんのバスケが大好き!個人的に今代表だと比江島選手と川真田選手が好き🏀

この記事はグループ戦のvsフィンランドを見て真っ先に思ったことを下書きにしていたのだけど、昨日のパリ五輪を決めたvsカーボベルテ戦で日本が勝利を掴んだ直後の会場の様子を見て確信してしまった。

「第ゼロ感」最強すぎんか?

「10-FEETのライブかな?」と錯覚するぐらい、会場が一体となったコールアンドレスポンス。しかも大合唱のパートだけ音を消すというDJの粋な計らい。

そりゃ会場で聴きたいよね、歌いたいよね、勝利の「第ゼロ感」を!

この歴史的勝利の大合唱が起こる前から「第ゼロ感」は無双を極めていた。

2022年冬「THE FIRST SLAMDUNK」の公開以降、バスケの特集においてどのニュースを見てもダイジェスト映像のBGMが必ずと言っていいほど「第ゼロ感」である。

これがバスケだけに止まらず、曲の力量はジャンルを超えて野球やサッカーなど、様々なスポーツにも使われるというとんでもない事態となっている。

これだけ「第ゼロ感」が熱く支持されるのは「THE FIRST SLAMDUNK」の影響に違いないのだが、公開も終わってしまったのでスラムダンクを見ていない人に説明すると「第ゼロ感」はエンドロールだけではなく、試合中ブラストするように何度か流れる。

特に顕著なのが、見た人全員このシーンでリョータに堕ちたと思うが、リョータが深津と沢北のダブルチームを突破する際に流れるサビの爆音である。おそらくこの時の「第ゼロ感」だけ音量大きめに設定してある。

本題に入る前にクソデカ感情を話させて欲しい

この記事は根本的に「THE FIRST SLAMDUNK」の話となる。

もとはロックバンドが大好きだ。ライブに通い始めて10年以上経った。さらに学生時代はバスケをやっており、しかも「スラムダンク」も原作全巻所持している超絶ガチ勢である。つい最近思い出したのだが、高校のとき授業の課題で「スラムダンク」を題材にしたこともある。

「第ゼロ感」も先行配信はしていたと思うが、この時は「映画で聴ければいいや」と思い事前にチェックしていないので、主題歌すら知らない状態、かつ世間では声優交代で手厳しい声が飛び交う最中にも関わらず「『THE FIRST SLAMDUNK』の主題歌に10-FEETとThe Birthdayが担当する」と言うだけで「絶対いい映画だ」と謎の自信が先走り、山王戦どころか声優と主題歌アーティストを解禁した以外何も情報無いのにバスケもロックバンドも好きな私にとって史上最強の神映画が確定したのである。

今思えばこの自信はなんだったのだろうと思いつつ、この謎の自信が当たっていた自分の選球眼を褒め称えたい。

とは言いつつ、根拠があって謎の自信が発生しているので、あれだけスラムダンクに関する記事を書いておいて何故書いてこなかったのか自分でも疑問であるが、本題に入る前に「THE FIRST SLAMDUNK」を主題歌の側面から話をしたい。

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10-FEETは、ロックバンドが好きなら知っている”知る人ぞ知る”立ち位置だった。活動は25年を超えるベテラン、フェスに出れば大きいところでは5万人近くが集まるメインステージが当たり前、自身も夏フェス「京都大作戦」を主催し続け、人気も実力も申し分無い。だから最初「主題歌:10-FEET」と聴いた瞬間、真っ先に「本物だ」と思った。

正直、驚いたのがオープニングのThe Birthdayの方だ。THEE MICHELLE GUN ELEPHAN、ミッシェルと言えば分かるだろうか、The Birthdayはあの伝説的バンド・チバさんがミッシェル解散後に組んだバンドである。

チバさんが「オファーが来た時、今までタイアップの話をもらったことが無かったからびっくりした」とコメントされていたが、あのチバさんにオファー出来るの井上先生しかいないと思う。

両バンドは紛れもなく本物でしか無かった。世間的には知られていなくても、支持の熱いバンドだからそう確信したのだと思う。

10-FEETの音楽について

一口に「ロックバンド」とは言えお酒のように種類は様々。スラムダンクでテンフィを知った人が大多数だと思うので、彼らの音楽を説明しよう。

↓歌詞考察はこちらの記事が好きなのでシェア

テンフィはパンクロックやラウドのテイストに加え、曲によってはレゲエやメタルなど織り交ぜており、3ピースバンドとシンプルな構成と言うこともあり一見似通った音のように聴こえるが、実は音楽的には雑多なジャンルが組み込まれており、かなり工夫されている。


例えばライブの定番曲「goes on」はツービートと呼ばれるリズム。いわゆるメロコア。

「4拍と2拍の違いは?」というと、2拍でカウントする方がアップテンポな印象になるのでメロコアではよく使われます。


「SHOES」は分かりやすくスカ・パンク。フェスの映像でツーステ(スカダン)と呼ばれるステップを踏んでいる人を見たことがあると思いますが、この裏拍のリズムがスカの特徴ですね。

「裏拍」とは、通常手拍子するとき「『タ』ン・『タ』ン・『タ』ン・『タ』ン」と『タ』のところで手を叩きますが、裏拍は「タ『ン』」の『ン』で叩きます。これが裏拍です。

最新アルバム「コリンズ」に収録されている「aRIVAL」のヘビーなサウンドにタクマさんのデスボイスはメタル

手元にギターが無いので確証出来ないのですが、おそらくチューニングは「第ゼロ感」と同じドロップD(レの音)(6弦だけ音階を下げるチューニング)だと思います。ちなみに通常のチューニングはレギュラーチューニング(Eのミの音)と呼び、ピアノで言うドミソです。

上記のアッパーな2曲と比べると「aRIVAL」はどっしりヘビーな印象。音階を下げることによって曲が重い印象になります。

色の明度と一緒で、音階も上げると明るいイメージに、下げると暗いイメージになります。

小難しいカタカナを挟みつつ、肝心な「第ゼロ感」について。ジャンルとして括れば軸はギターロック、そこにラウドが加わった感じかな。

①リズムとテンポ

「goes on」の駆け抜けるようなツービートと違い、「第ゼロ感」は終始四つ打ち。歌詞の深さや耳に残るリフも突き抜けているのだけど、この曲の肝はリズムだと思う。

まず、4拍子は日本人にとって馴染みが深い。

カラオケやライブでも4拍子は合いの手を入れやすいと思います。他には「ポカポカ」「ワクワク」のように「オノマトペ(文字を繰り返す擬声語の総称)は4文字であることが多い」と言う見解も。

山王や湘北の応援もリズム刻めば分かるけど応援歌も4拍子。バスケに限らず、応援歌で3拍子はなかなか無いですよね。

なんせこの曲に至ってはバスドラムの音と相まってドリブルの音のように聴こえる(多分だけど映画でのエンドロールはドリブルの音も重ねていると思う)。

「第ゼロ感」は「RIVER」と似た曲展開だと思うけど、「RIVER」は軸はロックだけどCメロにヒップホップ入れていたり、曲の骨組みからウェーブするように緩急があるんです。

対象的に「第ゼロ感」は疾走感が先行して聴こえるけど、BPM(曲の速さ)は変わらず土台は一定した四つ打ちのリズムなんですよ。

骨太なサウンドながらも根はキャッチーなんですね。

このリズムを土台に映画に合わせた曲構成に加えて、バスケのトランジションのような終始駆け抜けているようなスピード感が乗っかります。

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話の流れでテンポの話をすると、この曲のBPMは150。通常BPM100〜140あたりがポップスに使われることの多いテンポなので、「第ゼロ感」のBPM150はハイテンポな曲の類に入ります。

「第ゼロ感」の魅力はこの四つ打ちと、ツービートのようにハイスピードすぎず、世間に散らばっている曲のテンポよりは少し速い絶妙なテンポが柱になっていると思います。

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一時期邦ロック界でもダンスロックが流行したけど、個人的は振り付けが陶犬瓦鶏になる荒削りなロックにも関わらず「踊ってみた」が自然発生しているところは凄いことだと思う。

(ジャニーズの人たちがTVで踊ってたのと、Twitterで回ってきた車椅子の子がいるアイドルのダンスカバーがカッコよかった!)

②ドロップDチューニング

「第ゼロ感」はドロップDチューニングと言って、あらかじめ音階を下げたチューニングとなります。

バスケはスポーツの中でもトップクラスにハードでスピーディではあるけど、センター(ゴリや丸ゴリのポジション)のアメリカからのスーパーヒーロー・ホーキンソン選手や川真田選手のプレイを見ていると分かりやすかもしれませんが体を張ったパワープレイも見どころ。

「aRIVAL」で「音階を下げるほど曲が重い印象になる」と話しましたが、ドロップDチューニングに設定することで、バスケにおいての泥臭さや力強さを演出しているのかなと思います。

同時に意図的なのかは分からないけど、リョータの過去がかなりウェットで彼の重みを表現するために使われたのかな?と思ったり。

③フレーズがシンプル

TAB譜見るとギターもベースもフレーズ自体はかなりシンプル。

ギターは基本のリフを覚えれば繰り返すだけ、ベースもスラップなど難易度の高いスキルが必要無いので初心者でもコピーもしやすい。

昨今の音楽シーンから見ると、ボーカロイドなどの影響でDTM(打ち込みの曲)や難易度の高い曲がバズる傾向にあるので、こうした武骨でシンプルなパワーコードのロックは音楽シーンでは太刀打ち出来ないとは思われつつこの時代に逆行しているからこそ浮き出る真骨頂、スタンダードなロックでありながら映画のシーンにシンクロし、かつバスケのそのものに魅力を曲に落とした、音楽シーンにおいても「悪者見参!」のジャイアントキリングな至高の1曲なのです。

④コールアンドレスポンス

固く音楽理論を交え説明しつつも、やっぱり「第ゼロ感」の醍醐味といえば「♪ウォーオオオーオー」のコーレスでしょ!

昨今のライブシーンにおいてライブで観客が歌うことで完成する曲は多いけど、テンフィはライブバンドなのでその狙いもあるとして、主題歌としてまずは応援歌として見据えていたのかな?と思う。

「湘北下克上!」の時に流れる「第ゼロ感」だけど、白熱する会場の奥からこのコーラスが聴こえるの、毎回本当にたまらなかった。心の中で歌ってた。応援上映の時だけ声出してた。

映画を見ている”だけ”なのに、自然と歌って応援しているんですよね。目撃者ではなく当事者として。

その当事者が映画のスクリーンから飛び出し、現実のリアルバスケを見てみれば歴史を塗り替えオリンピック出場権獲得。そりゃ歌うでしょうよ!まさに「THE SECOND SLAMDUNK」!

応援歌の「第ゼロ感」から祝福の「第ゼロ感」へ、この快進撃は止められません!

この場にいた人たちが羨ましい…!

しかし非公式である

「そういえば公式テーマソングあったよな?」と度々忘れるぐらいにあまりにも「第ゼロ感」が場内BGMに馴染みすぎている。

もはや公式とは言っていいものの「第ゼロ感」は公式テーマソングではない。まさかの非公式なのだ。

今年のバスケワールドカップの公式テーマソングは藤井風の「Workin’ Hard」。

洒落たシティポップに強く絡むR&B、自然と身体が揺れる柔軟なメロディ、琴線に触れる刹那に両立する爽快な軽快さ。

今回のテーマソングの担当として”ワールドカップ”の名の通り、彼の人気も才能もワールドワイドで申し分無い。

もちろん藤井風は藤井風ではちゃめちゃに好き。だがせっかく魂込めて作ったのにこんなにいい曲が何事も無かったかのように埋もれてしまうのは勿体ないなと思いこの記事を書いたのだが、「スラムダンク」の爆発的な熱量に完全に押し退けられており、さすがに気の毒に思えてしまった。

ただ、今現在のバスケと言うハードなスポーツにおいて必要な音楽はポップスでは無く、ロックだったのは事実なように思う。

どこまで続くか「第ゼロ感」大無双時代

個人としては「『第ゼロ感』あるからテーマソングお願いしなくていいや」と言うのもなんだか違う気もするが、解説のエブリン選手やキャプテン富樫選手らがツイートしたように、ブースターどころか選手すらが「第ゼロ感」の熱量に感服しているのだからしばらくテーマソングは「第ゼロ感」でいいのでは?と思う次第である。

客観的に見ても「場内BGMで流れてテンション上がる曲と言えば?」と問われれば、ぶっちぎりで「10-FEETの『第ゼロ感』」と答える。

「第ゼロ感」一強の時代はしばらく、いや一生続きそうだ。

ロックキッズなら憧れのフェス「京都大作戦」。関西住みでは無いからというのもあるけどなんとなく敷居高く感じていて、いつか行きたいなと思い続けて10年近く経ってるんだけど、来年こそは重い腰を上げようかしら…!


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