岐阜が地元のarneが東京でライブをするのもかなり珍しいのだが、さらには今回が初ワンマンである。記念すべきライブを目撃しに青山の月見ル君想フへ。

ライブレポート

簡潔には「スタミナが不安」とのことで急遽2部制に変更。チケットはほぼソールドとのことで、場内はほぼ満員。

1部では白い衣装に身を包んだメンバーが登場。

タイトルの通り潮風が靡くような「seaside」からスタート、「epilogue」の「映画みたいなラストシーンだった」のフレーズがより一層世界観を引き立てる。

直後にアップテンポな「 simulacre」は曲質からか、一番ライブバンド感が出ていたような気がする。ライブを見るのは２度だが、以前よりライブバンドの轟音になっていたと思う。

全体を通してひらめさんとワオシュンさんの柔らかい声質の2人の掛け合いやユニゾンがたまらなく心地良く、格別「void」はその余白から安眠やそよ風のようなそう言った類の心地良さを感じた。

ポストロックの要素が強い「記憶遡行」「hailsham」の流れでは、「マスロック」という変拍子を特徴とする複雑な音楽に対して、arneは文学的なエモーショナルさが根底にあるような気がした。小説の中にいるかのような、そのまたさらに小説に登場する喫茶店の中にいるかのような、日本語の没入感を錯覚する。どことなく和紙のような温もり感じる。

3曲目の終わりにひらめさんがMCで早速号泣し出すハプニングもありつつ、一部が終了。

15分ほどの休憩を挟み、2部は黒い衣装に身を包んだメンバーが登場し、「杞憂」から再開。ミニアルバム「In your somnia」から表題曲の「somnia」「cinder」と繋ぐ。

個人的には今回のライブで「orchard」が格別に良く、のサビの「夜が私に告げる　神とかいないでしょう」があまりにも刺さった。なんとなく咲き乱れるネモフィラ畑のような潤った麗しさを連想した。

ひらめさんの歌から入るアレンジした「chronicle」、ラストは「hallu」と原点回帰にするように発表された楽曲を全曲演奏して終了。

ライブ終了後は観客と記念撮影をし、モデルのくわはらひなたさんとトークショーを行い、物販でチェキを撮ってもらって退散。

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「月見ル君想フ」は予め大きな満月がステージの背後に常設されている特異なライブハウスだ。

数多のバンドがあのステージに立ち、そのバンドが鳴らす音楽によってはずっと月を見上げるのは帰り道を連想したり、まるで宇宙にいるかのように思ったりすることもあるかもしれないが、arneは不思議と凪の夜の海に浮かぶ揺れる月を見ているかのように思えてた。壮大で穏やかで、古来先人達が和歌を残してきた理由が分かるような美しさを感じていた。

感想

日本ではマイナーなジャンルであるマス・ポストロックだが、彗星の如く現れたarneによって、まだマスロックの未来は明るいなと思った。

心地よい夜の深さ、どことなく感じる"和"の慎ましさ、珠玉のマスロックを存分に浴びた金曜日の青山の夜だった。