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ネタバレ有。映画「パラドクス」考察

この作品を観て初めは(なんやこれ)と思いました。不条理な作風もですが、残されたままの伏線もあったからです。
特に個人的に謎だった花嫁の未来である老婆からネズミを受け取ったのは誰か?を元に仮説を建てました。

このネズミはどこから来たのか

僕は初めは時系列的にダニエルのネズミだと思ったいました。
しかし、よく見てみるとダニエルはパトカーに乗る時にネズミを置いてきています。
なので言ってみればネズミにとっての終着点はその時であり、ダニエルがネズミをループに持ち越す事はできません。
そこで考えました。このネズミはダニエルから老婆が受け継いだのではなくダニエルが老婆から受け継いだのではないかと。つまり老婆の手からねずみを受け取ったのはダニエルではないのか。パトカーの外に置いていかれたのがネズミにとっての終着点だとすると、それがネズミの出発点ではないかと。

それに応じて僕が予想した時系列を書きます。


カール(弟)によって花嫁がループに巻き込まれます。
ループから逃れた花嫁はエスカレーターがある部屋に逃げ込み、そこでダニエルと出会います。
花嫁はループから逃れた時点で高齢だった事から死亡します。
ダニエルはネズミを受け取ります。
家族と旅行に行ったダニエルはループに巻き込まれます。
ダニエルはループから逃れるためにパトカーに乗り込み与えられた役割から自分を刑事だと思い込みます。ネズミは置いていかれます。
刑事は弟の部屋にどなり込み、弟はループに巻き込まれます。
ループから逃れた弟はエレベーターに逃げ込みそこでカールという役割を与えられて花嫁をループに巻き込みます。

コレによって伏線の謎はある程度消化されループの螺旋も完成します。

つまり花嫁の正体は物語の最後に解るので時系列的には物語の、ループの最後の出来事のように思ったでしょうが、実は「はじまり」だったのです。

 

次にその説を裏付ける伏線を書いていきます。


まず物語の中で印象的な存在として出てくる小さなトランプ。

これは刑事がいつの間にか持っていたのが初登場ですが、後にダニエルのものだったということがわかります。
そしてそのトランプはダニエルは「おばあちゃんからもらった」と言っています。
私はこのおばあちゃんというのはパラドクス(矛盾)を起こさないための記憶改変こそあるものの年老いた花嫁なのではないかと思っています。 
トランプは刑事の銃やカールの制服のような役割を引き継ぐための小道具に過ぎず、本当に受け継いだのはネズミだったのではないでしょうか。
おばあちゃん(老女)から何かを受け取るというは私の仮説と似通った状況です。

それと平均して寿命が役2.3年といった所であるネズミが35年も生きている点も、物語を紐解くためのヒントとしてある種超常的な役割を与えられているからではないかと思いました。

物語もループしてる説のもう一つの根拠としては、冒頭の会話があります。
冒頭の会話を掻い摘んで書くと

「何かやらかしたらしい弟が兄にその事を謝ろうとしている所に刑事が訪れてその刑事に「母親を殺すぞ」と脅されて観念した事を弟が白状する」というものです。

ただ偽刑事の元で運命により与えられた役割を演じているのもありますが、会話内容は要領を得ず辿々しいです。

刑事が母親を殺すぞと強迫するというのはいくらなんでもクリント・イーストウッドもビックリしそうな程にダーティー過ぎますし、その母親は電話に出ず、弟が何をしでかしたのかも最後まで解りません。

そこで僕はその会話の本当の意味はこうでないかとまた推測しました。

弟がやらかしたというのはループを発生させた事で、「母親を殺すぞ」というのは「親殺しのパラドックス」の事ではないかと。

【親殺しのパラドックス】タイムトラベラーが過去へ行って、[子どもを持つ前の]自分の親を殺した場合、自身もまたこの世に存在することが不可能になり、存在しなくなる。 すると、そもそも過去へ行って殺人を犯すことが不可能になる、という矛盾

纏めると「弟はループが起こらないように抵抗したが、刑事からパラドクスが発生するぞと脅されて運命に抗う事ができなかった」と兄に謝っているのではないかという事です。

このような考えを持つのはループが初めてでははく弟が何度もループを経験しているからこそではないでしょうか。

先述のトランプの説、あるいは作中の老いた刑事や義父が何か伝えたい事を覚えていたようにループ前の記憶はある程度残っているようなのでその可能性はあると思います。

ただ、以上の説はダニエルの義父が建てたループの説とは矛盾するのですが、この作品は与えられた役割のために偽りの記憶を持つ事は珍しくないので、義父はミスリードさせるという役割を与えられたか、あるいは年老いた刑事が我が子の結婚に想いを馳せたようにループを重ねる中での現実逃避から産まれた自論に過ぎないのかもしれません。

ループを持ち込んだ人が死んだらループを解ける説はダニエルも弟もきっかり35年でループが溶けているので時限式ではないという確証はないし、じゃあ弟が刑事をあの時に射殺してたらループから抜けられたのか?という疑問が生じます。

ただ、そうなると今度は冒頭の老婆のループからダニエルがどうやって抜けられたのかという矛盾、パラドクスが発生するのですが、それについては解りません。(わからないのかよ)

おそらくですが、線から螺旋を作ろうとしたら必ずどこかに結び目ができるできるようにあの出来事がループの始まり、結び目だからではないでしょうか。

以上の事からこの物語を総括すると運命の螺旋「回し車」がエネルギーを生むための機械的構造なのだとすると、回し車の中のネズミがダニエル、ネズミを回し車に入れたのが弟という事になるのではないかと思います。

弟とダニエルのどちらがループの先なのか、鶏が先なのか卵が先なのか、その受け取り難い矛盾こそ《パラドクス》なのではないでしょうか。


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