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【ネタバレあり】テネットの最終戦とタイムトラベルの解説

難解で有名な作品である本作を解説する前にまずは本作を複雑たらしめている約束事の解説をしたいと思います。
この作品と言えば過去と現在が交錯しますが、バックトゥーザフューチャー等のこれまでのタイムトラベル物と比べると独特なルールがあります。

まずは物語の基本になっているそのルールを説明します。

この世界では回転扉という未来からもたらされた機械を使うことで過去へ飛ぶことが可能になります。
過去へ飛んだ後はエントロピーの関係で呼吸も含めた大気が逆行するので呼吸ができなくなるので酸素ボンベ等の人工的な呼吸手段が必要になります。
つまり劇中に度々出てくる呼吸器を付けた人物は未来から来た人だという事が解ります。

そしてこれが一番重要なのですが、この作品におけるタイムトラベルした場合の時間の流れについて説明します。

図のように未来から飛んだ人は過去で何かを変えるために行動し、過去の人はそうとは知らずに普通に未来へ向かって行動します。
しかしその前提として結果があります。未来の人も過去の人も目の前の事象にアクセスする事は可能ですが、所詮は既に決定事項である結果に向かって双方向から進んでいるだけに過ぎないのです。
なので結果に向かって真っ直ぐ普通に進んでいる過去の人からすると未来から来た人は逆行しているように見えるのです。
結果が確定しているなら未来から過去に干渉する事に意味は無いのかというと、未来から過去に干渉する事も含めた上で結果ができあがっているので過去への干渉がないと結果が成立しないという一種のパラドックス(矛盾)が発生する事になります。
以上の約束事も踏まえた上で一番難解であろう最終戦の挟み撃ち作戦を時系列で説明すると

まずはブルーチームが情報収集等のために一足先に過去のスタルスク12に飛びロシア兵と戦闘します。激闘を終えた後、生き残った面々が再度戦闘前にタイムスリップしてここでニールと合流。(コンテナに入っていたのは激戦のせいで人数がかなり減っているのをレッドチームが見る事で士気が下がるのを防ぐため)
そして少しだけ遅れて過去にきた主人公の所属するレッドチームと一緒に再び戦闘を開始します。

ここからはまず主人公の視点で説明しますが、彼はレッドチームの隊長とさらに別動隊を結成してコーデックスの回収に向かいます。
激戦の最中何故かクラクションを鳴らしてながら追ってくるトラックを振り切って目的地である坑道に入ると地雷が作動し坑道の入口が閉じてしまいます。
やむおえないのでそのまま坑道を進んで目的地につくのですが、最後の最後でキーロックに阻まれます。
何故かキーロックの中にいたブルーチーム兵士の遺体を鍵でもないかと弄っていると見覚えのあるキーホルダーを見付け、混乱している所をセイターの部下ボルコフに見つかり頭部を銃で狙われ絶対絶命の状況となった所で突如遺体が立ち上がりまるで主人公を守るように代わりに銃撃されドアのロックも開きます。
そこで攻勢に出てコーデックスの回収に成功するのですが、キャットがセイターを射殺した事で爆発のカウントが開始され生き埋めになる事を覚悟していたら何者かからロープが投げ込まれ…

次に物語のもう一人の主人公であるニールの視点です。 
ニールはブルーチームと合流して戦闘に参加しますが、主人公が心配になり坑道の入り口まで来た所で未来から来たボルコフが爆弾をしかる所を見付けたので慌てて再度過去に戻り、トラックで爆走して主人公を追いかけ、クラクションを鳴らして坑道に入ろうとする主人公を止めようとします。
しかし、間に合わず主人公は坑道に入ってしまいます。(先程主人公が見たトラックはニールだったのです)
そうなってしまってはもはや不可能だとは理解しつつもそれでも主人公の帰還を祈って作戦終了の時間が来てもその場に残り続けますが、坑道の爆発に巻き込まれないために仕方なく発車するといつのまにかロープにぶら下がっていた主人公を見付けて何がどうなっているのか解らないまま大喜びします。

その後、機密保持のためにコーデックスを分け合い主人公と会話をした後に別れるのですが、その背中には坑道にいた遺体と同じキーホルダーがありました。そうです。先程までの事象から既に自身の役目を理解していたニールは過去に戻り、トラックにつないだロープを坑道に投げ込んだ後に扉を解錠(ニールはロック解除の名人)、そして銃撃される主人公の前に立ちはだかって代わりに銃弾を受け人生の終着点を迎える事になるのです。
これが最終戦の内容だと思います。

そして最後にこれもまた諸説を呼んでいるプラヤの殺害ですが、私が思うにこれの理由に関してはまずは、一先ず事件が解決したという時系列的にコーデックス事件の解決という「結果」を迎えるのに彼女が必要なくなった事。

それとキャット、何より彼女の息子であるマックスを守るためだと思います。
私はセイターの妻であるキャットでさえ覚えていなかったセイターとのバカンスの日を覚えていた事(主人公も何故そんな事を知ってるのか疑問視してました)と主人公に対する異常な程の献身性からマックスは将来のニールなのでは?と思いました。
メタ的な理由だとニール役のロバート・パティンソンがわざわざマックスと同色のブロンドに髪を染めてもいます。
その説を裏付けるためにネットで調べてみた所、ニールとマックスはアナグラムになっており、監督自身も「ニールの本名とアイデンティティは本物とは限らない」と発言しているようなのでほぼ間違いないと思います。

つまりこの説があっているとしたらマックスは成長した後に主人公と出会いニールと名乗る事になるわけですが、このニールというのはキーホルダーの存在から物語冒頭の逆行兵も彼である事が解り、つまりその時から最後に至るまで作中何度も何度も主人公の命を救っている事になります。
つまりニール=マックスは主人公にとっては大の恩人であると同時にコーデックス奪取作戦が成功するという【結果】に至るためには必要不可欠な存在なのです。
今回の事を踏まえて近い将来にこの作戦を主導する事になる主人公からすれば、作戦の柱石であるマックスと既に役目を終えたプラヤのどちらを守るかというと考えるまでもないわけです。

さらにこのプラヤですが、もう一つ面白い事があります。
上司的な存在である彼女の秘密主義を受け継いだ事で主人公は物語の中で度々秘密主義な事を批判される事になるのですが、実はこのプラヤ自身も組織のボスである(未来の)主人公から秘密主義である事を命令されている事が解るのです。主人公は先述の通りプラヤに影響されているのでつまりどちらが組織に秘密主義を持ち込んだのかが解らずここでもパラドックスが起きてるんですよね。

だから私はこの物語はタイムトラベルをテーマにしているように見せて、実はむしろそこで生じるパラドックス(矛盾点)を主題にした映画なのではないかと思いました。
後半は正直、脳の演算能力をオーバーして処理落ちしながら観ていたのでどうかと思いますが、以上、私はこう思うという考察でした。



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