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劇場の入場規制体温は37.5度でよいのか

いま上演されている舞台作品の感染対策マニュアルを確認するとほぼすべての作品で体温が37.5度以上の方のご入場をお断りする旨のことが書かれています。
実際には受付で体温計やサーモグラフィーなどでチェックをして、37.5度以上の人にお声かけをしてその方の平熱や直前の行動などを確認しながら対応しているところも多いでしょう。
そもそも体温には個人差がありますし、特に夏場は開演時間ギリギリになって劇場に駆け込んでこられて少しこの設定値を上回って来られる方も経験しました。

このようなマニュアルは一旦一斉に舞台公演が中止になった後、春から夏にかけて公演を再開するに当たり各団体が専門家を交えて検討しながら作成して、そのような個人や状況による違いを加味して37.5度という少し高めの数字が設定されてきました。

実際には、例えば平熱が36度以下で37度に近づくとすでに危険信号という方もおられると思います。
現在このような方の体調不良をチェックする方法を備えて受付業務を行っている団体は皆無だと思います。
そういう意味でもこの37.5度という値については今後もっと経験を重ねて検討していく必要があるだろうと思います。

また人間は恒温動物とは言え、体温には季節変動もあります。
これから冬場にかけては先ほどの夏場の駆け込みのお客様とは反対に、ゆっくり寒空の下を歩いて来たお客様の場合には発熱していても体温が低めに測定される可能性もあります。
つまり、これから冬場の公演において入場規制する体温を夏場と同じ37.5度という設定にするというのは少なからず問題もあるということです。

いくつかの感染例の報告があった公演があったとはいえ、色々と騒がれたほどには問題となるケースも少なく少しずつ舞台公演のできている最大の理由は劇場に感染した方が入ることを防げているからだと言えます。
逆に言えば、残念ながらクラスターの報告のあった公演においては、当然のことながら感染した方が劇場や稽古場に入ってしまったからということが理由となります。
ですから劇場での感染予防対策としては今後もそれが最大のタスクとなります。

入場規制体温値についてはもちろんそのままの設定でも受付でのチェック体制を更に厳格にすることで対応することも可能であり、一概に37.5度という数値を示しているマニュアルを不適切とは言いません。
しかしもし万一既存の他団体のマニュアルをそのままコピペして自分たちのマニュアル作成をしている団体があるとすれば、今のうちにちょっと立ち止まって欲しいです。
観客サイドとしては夏公演と同様に相変わらず37.5度という数値設定をしている団体の冬場の感染対策はちょっと疑っておいた方が良いと言えるかもしれません。

今回指摘しているのは、入場規制体温の設定値だけの問題ではありません。これまでにも感染対策は常に公演ごとに検討する必要があるということを言ってきました。
少なくともこれからの冬場の公演において夏場と同じ対策で臨もうとしているのであれば、きちんと0ベースの見直してして感染対策をするべきだということが最大のメッセージです。

新型コロナウイルス感染症においては依然として定まった治療方法はありませんしワクチンもまだまだ間に合いません。
少しずつ公演が行われる中でなんとなく元通りの方向に近づいている錯覚に落ちそうになりますが、全くそうではありません。

このウイルスが日本に上陸したのは今年の1月半ばのことでした。
つまり12月~1月の本来の最流行期である可能性の高い時期に関して、日本国内での知見は未だ無いのです。
この後行う公演については今まで以上に注意を払って慎重に対応する必要がある(再び公演ができなくなる可能性も含めて)と考えています。


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