小泉うめ

観客発信メディアWLスタッフ。舞台制作。舞台感染対策。劇評。写真。感染症学。精神薬理学…

小泉うめ

観客発信メディアWLスタッフ。舞台制作。舞台感染対策。劇評。写真。感染症学。精神薬理学。社会心理学。

マガジン

  • コロナと舞台

    コロナ禍において舞台公演を行うための感染対策サポートの仕事を始めています。そんな中で考えていることを語りながら、皆さんの役に立つ情報発信がしていければと思っています。よろしくお願いします。

  • 稽古の場所から

    「稽古の場所から」では見学させて頂いた舞台作品についてその感想を紹介しています。見学させて頂ける稽古先も募集しています。

最近の記事

「観劇おじさん」という言葉の変遷を考える

1980年代の小劇場ブームが終焉を迎えた後、1990年代に岩松了、宮沢章夫、平田オリザらによるいわゆる「静かな演劇」が現れもてはやされるようになった。演劇界全体を見渡すとこれはそれ以前の「賑やかな演劇」から取って代わったのではなくて演劇の形が多様化したという方が適当な見方で従来のような作風がなくなったというわけではない。「賑やかな演劇」は消滅することはなく今も継続して上演されている。 小劇場ブームの頃は正にブームと言うだけあって、観客が友人や恋人と次の観客を劇場に連れてくる

    • 「かながわ短編演劇アワード2022 演劇コンペティション」の審査についての神奈川県への問い合わせの顛末について

      「かながわ短編演劇アワード2022 演劇コンペティション」の公開審査会で発生した非論理的な選考手順について、SNSでつべこべ言っていても仕方ないので、神奈川県の担当部門に質問をさせていただき、ご回答をいただきました。 これは審査結果を覆すことが目的ではなく、その手順の不適切さに気づいていただくことが目的で、その気づきについてコメントをいただければと思っておりました。 結論としては、次回の開催に向けて、より明確な審査の方法を検討していくという但し書き付きで、今回の審査は適切

      • やっぱりおかしい

        前回の記事をたくさんの方に読んでいただきありがとうございました。 私なりに更に色々と考えてやはり今回の「かながわ短編演劇アワード2022 演劇コンペティション」の最終審査における選考手順は不自然であるという結論に達しており、もしどなたかこの選考手順の正当性を証明できる方がおられたら是非ご教授ください。 ※重ねて記載しておきますが、私はいずれかの団体と関係があるわけではありませんし、いずれかの団体を強く推す立場でもありません。 以下が一番重要なポイントだと思っています。 私

        • 舞台芸術コンペティションの審査について

          最初に 今回受賞された団体の上演は素晴らしかったし、充分にそれに値するものだったと思っています。 これはそれに異論を唱えようとするものではありません。 もう一つ 舞台作品を並べて上下を付けるという行為を手放しで受容できていないところは個人的にあるのですが、それによって生じる舞台業界の盛り上がりや参加団体や受賞団体が得られる注目や副賞など様々なメリットも理解できるので決してコンペティションに対して頭ごなしに否定的な態度でいるわけではありません。 しかし、だからこそ、もしそれを

        「観劇おじさん」という言葉の変遷を考える

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        • コロナと舞台
          6本
        • 稽古の場所から
          3本

        記事

          【緊急提言】2022年2月以降の舞台公演の感染対策について

          (以下の文章は、2022年2月2日にtwitter spacesでお話しした内容です。あくまでもその時点での情報からの提言であることを予めご了承の上お読みください。) ー-------------------------------- そもそも日本人の防疫意識の高さはマスクの着用率などで従来から知られているものでした。もちろん個人差はありますし、感情的には色々な意見はあると思いますが、そういった要因もあって日本での感染拡大は欧米諸国と比較して最初は緩やかだったと言えると

          【緊急提言】2022年2月以降の舞台公演の感染対策について

          3月に「オリンピック選手村を首都圏の新型コロナウイルス軽症無症状患者収容施設として開放せよ」と言っていたわけを説明します。

          3月にTwitterから何度か「オリンピック選手村を首都圏の新型コロナウイルス軽症無症状患者収容施設として開放せよ」という発信をしました。賛同する声もいただけた他方で、何を狂ったことを言っているのかというように感じられた人もおられたようです。10ヶ月ほどの時間が流れて今、日本中がある程度の感染症の知識をつけた状況と、まさに医療体制が崩壊しようとしている状況の中で、あの時どうしてそういうことを言ったのかを少し振り返りたいと思います。 まず逆にオリンピック選手村を患者収容施設と

          3月に「オリンピック選手村を首都圏の新型コロナウイルス軽症無症状患者収容施設として開放せよ」と言っていたわけを説明します。

          劇場の入場規制体温は37.5度でよいのか

          いま上演されている舞台作品の感染対策マニュアルを確認するとほぼすべての作品で体温が37.5度以上の方のご入場をお断りする旨のことが書かれています。 実際には受付で体温計やサーモグラフィーなどでチェックをして、37.5度以上の人にお声かけをしてその方の平熱や直前の行動などを確認しながら対応しているところも多いでしょう。 そもそも体温には個人差がありますし、特に夏場は開演時間ギリギリになって劇場に駆け込んでこられて少しこの設定値を上回って来られる方も経験しました。 このようなマ

          劇場の入場規制体温は37.5度でよいのか

          稽古の場所から(3)「パンと日本酒」

          私事ですが、もしそれが完全栄養となるのならパンとチーズとワインがあれば食事はずっとそれだけでいいと思っています。 もしくは肴1つと日本酒だけでもいいです(八代亜紀か河島英五みたいなものです。歳がバレます。) そんな人間なのでパンと日本酒でもまぁまぁいけるのですが、やはりそれは非常手段な感じを否めません。 いや、それは特に作品とは関係のない話です。 今回はAhwoooの稽古場にお邪魔してきました。 と申しますか、今回私はこの作品で感染予防対策のお手伝いでもさせて頂いております

          稽古の場所から(3)「パンと日本酒」

          現代社会においてヒポクラテスの誓いは医師だけに必要なものなのか

          今日の話は舞台からは少し離れます。 でもむしろすべての人に知って欲しいことでもあります。 そして決して舞台からそんなに遠い話でもありません。 医学・薬学を学ぶ時には必ず最初に「ヒポクラテスの誓い」というものを習います。 医療を司る者の倫理やその任務についての宣誓文で、紀元前古代ギリシャでヒポクラテスらによって書かれたとされている文書です。 これは医学教育には500年以上前から採り入れられているそうです。 医療の技術は日進月歩で次々に新しいものが生まれているわけですが、それ

          現代社会においてヒポクラテスの誓いは医師だけに必要なものなのか

          マスクとフェイスシールドとマウスシールドには互換性があるのか

          最初に結論を言います。 マスクとフェイスシールドとマウスシールドには互換性がありません。 そもそも用途も効用も異なるものです。 舞台や稽古場でマスクを着けたくない(顔が見えない、声が聞こえない、苦しい etc)からという理由でフェイスシールドやマウスシールドを着けている団体が増えてきましたが、感染対策としてはそれで十分だとは言えません。 多くの舞台作品においてマスクを着用しての上演というのは難しいでしょうから、上演に際しては役者がマスクを外せるだけの環境を作ることが必要です

          マスクとフェイスシールドとマウスシールドには互換性があるのか

          劇場の換気は不十分なのか

          最初にライブハウスでクラスター感染が起こった時に、そのリスクの1つとして換気の悪さが指摘されました。 これによって同様の構造を持つ劇場で公演をする舞台作品は次々に公演を自粛していきました。 特に地下にあって窓がないような劇場の場合は窓開けによる自然換気が不可能ですし、機械換気も老朽化しているような所が少なくありません。 換気の悪さは間違いなく感染リスクを増大させるファクターですし、そうである以上舞台公演にはリスクがあってしっかりと検討された対策が必要であることは否定できませ

          劇場の換気は不十分なのか

          舞台を支援する感染対策の専門家はどのように位置づけられるべきなのか

          新型コロナウイルスの蔓延後、舞台芸術が再開するにあたり「専門家の指導を受けて公演をしています」という作品が増えてきました。 これは出演する側や観劇する側にしてみれば少し安心できる材料になっていると思います。 ではそれはどれくらい安心なのでしょうか。 ちなみに「感染症の専門家です」と言われると、私は日本感染症学会の感染症専門医資格を持っているかそれに準ずる活動をしている方をイメージします。 (この中には呼吸器感染症を専門外とされている方もおられますが、認定試験の内容はもちろん

          舞台を支援する感染対策の専門家はどのように位置づけられるべきなのか

          私たちはいつか笑われるだろうか

          2020年8月15日、75回目の終戦記念日です。 現在再び動き始めたいくつかの舞台公演の感染予防対策の支援に従事しています。 この特別な年の夏、舞台公演を行ってよいのかどうかということについては様々な議論があってしかるべきだと思っていますし、「とんでもない」という声があることも承知しています。 しかしそれでも舞台公演を必要と考える人がいて、そして確りとした思慮をもってそれに取り組もうとする人たちを偶然にも応援できる状況になってしまった私はできる限りのことをしたいと動き始め

          私たちはいつか笑われるだろうか

          稽古の場所から(2) 「明日で全部が終わるから今までにした最悪なことの話をしようランド」

          毎年10月はKYOTO EXPERIMENTのために京都を訪れることがお決まりの年中行事になっています。 今回この期間中に京都芸術センターでakakilikeの「明日で全部が終わるから今までにした最悪なことの話をしようランド」の稽古場にお邪魔して来ました。 まずタイトルが長くておもしろいですよね。 そしてただおもしろいというだけでなく、akakilikeの作品を観る時にこれに注目することはとても大切だと思っています。 なぜかと言うとakakilikeの作品はタイトルがこのよ

          稽古の場所から(2) 「明日で全部が終わるから今までにした最悪なことの話をしようランド」

          稽古の場所から(1)「boat」

          今年の夏は海に行きましたか? 私は行けませんでした。 その代わりと言うわけではないのですが、calmoプロデュース「boat」の稽古場にお邪魔してきました。 8人の役者が極小のセットの上でせめぎ合う超高密度な演劇作品です。 今回上演するのは、2003年・2013年に劇団ブラジルによって上演された傑作「性病はなによりの証拠」のタイトルを変更しての改訂版再演になります。 陸ひとつ見えない大海に浮かぶ たったひとつの小さなボート【boat】の上 遭難した8人の男女の疑心渦巻く

          稽古の場所から(1)「boat」