「朝食」は「朝、人を良くする」と書く。もう数えられるくらいで退職をするのだが、仕事にはなんの未練もないものの、朝食、昼食にはセンチメンタルな気分になる。顔を覚えてくれた人のありがたさ、食べる喜び、頑張ろうという気持ちにさせてくれた環境がなくなることは寂しい。
　話しかけてくれ「毎度」と言ってくれるスタッフさんたちや、何も言わずにタバコを用意してくれるコンビニスタッフにさえ、ありがたさを感じる。
　数えるくらいなのだから大切にしていきたい。

　景気よく行こうかと一瞬思ったが、私はいつも通りが嬉しく、また好きなのでいつも通りのものを頼んだ。特別な日だから、自分へのご褒美は際限がない上に、もしかすると私はずっとそれを続けてるのかもしれない。
　上顎を怪我しそうなほど硬い衣を、噛み砕いていかからほのかに香る甘味を感じながら、わさびを載せてそばをすする。
　前職では毎日そばを食べ、年間360杯程度食べてきた思い出も蘇る。サラリーマンにとっては、立ち食いそばや朝のそばは、豪華で特別だ。
　まして朝食が食べられるところが軒並み時短をしているのだ。ありがたいに決まっている。

　……私は朝食が好きだ。朝食産業に幸あれ。