note:33 ミラノサンドAとアイスコーヒーM【BreakfastNotes】
……私は朝食が好きだ。夏のこの暑さで食欲がなくなっても食べたいと思う。
会社の喫煙スペースで、朝、ひっくり返ったセミがいた。違う部署のお姉さんと「この子はもう終わりだね」などと、セミの短い一生を思い、その最も輝いた時期を終え、最期を迎えるだろう所を見て、心で手を合わせていた。
しかし一時間毎に見ても、手足を動かして臨終していなかった。
とうとう退勤前の最後の一服まで、セミは生きていた。命の強さを感じた夏の一日だった。
久々に食べようと思っていた。店内は涼しく、賑わっていた。注文し、受け取る時のお皿はしっかり熱く、お皿の温度一つにも優しさを感じる。このパン一つがお腹の中に入るのだ、人間とは不思議なものである。
綺麗に切られた断面を見て、おそらくマヨネーズ、レタス、ハム、生ハムと挟んであるだろうか。少し固めのパンに潤いと味をプレゼントして、パンはそれを頂き、一体感をそれぞれに与えてくれる。型崩れが少なく、全てを一緒に食べる事ができる。
思ったよりきついハムの塩気が、よりパンを甘く感じさせてくれる。アイスコーヒーで、すっきりと流してしまうと、残る思い出は「うまかったな」くらいなものであった。幼少期や学生時代の思い出と同じで、いいところだけがいつまでも残っている気がする。
「朝食」は「朝、人を良くする」と書く。
……明日は、何を食べようかな。
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