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パワポケは僕にとって人生の縮図そのものだ

※当記事にはパワポケシリーズの一部ネタバレを含みます

こんにちは。

先日、人気YouTuberの『笹木咲』さんが投稿した動画。そのタイトルには“パワポケ”の文字があった。

パワポケシリーズの大ファンだった僕にとって、この3時間は文字通り夢のような時間だった。だって、僕の人生の大黒柱となっているゲームを、でも今はシリーズが打ち切りになってからもう8年も経ってしまったゲームを、目の前のVTuberがとても楽しそうにプレイしてくれているのだから。

恐らく『パワポケ』と聞いて真っ先に思い浮かぶのは「ギャルゲー」「鬱エンド」だろう。もちろんその一面も魅力の一つだ。
しかし、それ以上の魅力……いや、“魔力”を持っているのがパワプロクンポケットというゲームだ。このゲームは人生の縮図なのではないか。そう思わされたことは1度や2度じゃない。様々な価値観・人生観を教えてくれた。真の意味での「野球バラエティ」だ。

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僕が初めて買ってもらった携帯機の野球ゲーム。そこには『パワプロクンポケット7』という文字が書かれていた。
GCのパワプロはプレイ済みだし、そのGBA版なんだろうな。そう思っていた僕の目に入ったのは、あきらかに戦隊ヒーローの見た目をした「レッド」だった。

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どういうこと………?????

野球ゲームをはじめとしたスポーツ系作品は、熱血・努力・勝利が王道だと思っていた。子供向けみたいなキャラデザからしても、王道の話が来るんだろうなと予想していた(実際、初めてプレイしたパワプロであるパワプロ10は王道のストーリー展開だった)。

だけどパワポケは違った。初手から王道を裏切ってきた。監督から頼りにされる「ヒーロー」と、邪険にされる「普通の人間」。主人公たちが練習して野球で結果を出してもすべてヒーローたちの手柄にされ、普通の人間の努力は監督にとって無かったことにされていく(しかもBADルートではなく通常ENDだ)。

初見で衝撃を感じた。
悔しい。勝ちたい。わけがわからない。子供ながらのモヤモヤした感情が一気に溢れ出てきた。

何回プレイしてもどうすることもできない。“答え”を知るため、僕はPCの世界に入り込んだ。
いわゆる個人サイトを漁りながら、なんとか真エンドに近づくことができた。そして、この物語の軸を知ることができた。

今まで見てきた“物語”とは、パワポケの世界は明らかに異質の展開だった。
「正義のヒーロー」が“悪役”で、「悪役」は“ヒーローが作り上げたもの”だったのだから。

物語の真相を知った時、クエスチョンと驚きが同時に浮かんだのを覚えている。今まで見たことのない世界観だったからだ。

……気付いたら一瞬でパワポケの虜になっていた。
今までやってきたゲームとは何かが違う。そう確信した。

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2年後に僕は『パワポケ9』を買ってもらった。

OPの段階でまたパワポケスタッフはプレイヤーの想像を超えてきてくれた。格闘シーンで男の子がいじめられていた所に格好よく登場してきた主人公キャラは、パワプロクンの見た目で無精ひげをたくわえたホームレスだったのだ。しかも、パワプロクンの姿をした主人公が、食べるものに困って道端の食材を拾い食いする描写もあった。今までの主人公像からは考えもつかないキャラクター造形だった。

それでも、OPで困っていた少年を助けたり、寡黙ながらも商店街の発展のために常に最善を尽くす姿、野球チームに入って活躍し商店街を盛り上げていく姿も同時に描かれている。

”風来坊さん”ってかっこいい男の人だな。そう感じた。

しかし、主人公(=風来坊)を始めとした助っ人の存在は、元からいたチームメイトには歓迎されていなかった。徐々にチームにに溝が深まっていく。

その中で新しい監督が就任する。

どこかで見た顔だ。……そうだ。2年前に「ヒーローを歓迎」して「人間を冷遇」した、あの監督だ。
再登場してどんな風になっているんだろう。興味津々のままストーリーを進めていった。

いきなり「助っ人」の主人公をキャプテンにし始めた。そして、また2年前と同じようにチームの壁は決定的になっていった。

また同じ道を歩んでしまうのか……。

でも違った。主人公は大人だった。元いるメンバーと平等な条件で勝負し、その後で和解して見せたのだ。監督も、和解するのを見越していたかの言動でチームを一丸にさせる手助けをしてくれた。

その後一丸となったチームはラスボスとの試合に勝ち、商店街も活気を取り戻す。街の人たちに感謝されつつも、主人公は役割が終わったかのごとく”風来坊”に戻っていった。

その姿はまさしく「ヒーロー」そのものだった。

対照的に見えてこうも違う展開を見せてくれるのか……なんなんだこの「野球バラエティ」は……。
僕の中でのパワポケの立ち位置は不動のものになった。より多くの時間を惜しんでパワポケに熱中するようになっていった。

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パワポケシリーズで最も魅力的なポイントは、僕の中では2つあると感じている。

1つめは、「登場キャラクターの人間臭さ」と感じている。どれほど突飛な設定に見えても、各人の行動に確固たる理由があるところが大好きだ。

一見悪役に見える立場の人間であっても、彼らの裏には使命感や悲しい背景があるキャラばかりだ。それらを見ると一気に憎めないキャラになってくる。また、「人造人間」「SF」「裏社会」などといったフィクション性の高い設定の中に登場人物の心の機敏を混ぜることで、一気にプレイヤーの心を打つシナリオを作り上げている。

例えば、パワポケ8には『サイボーグ同盟』というキャラクター達が出てくる。彼らは物語の中で妨害行為を行うためテロリストとして警察に追われる立場のキャラクターだ。しかし、彼らには「テロ活動」を行うべき理由があり、そして彼らには出自ゆえの“普通の人間ではない”という葛藤がある。悪役に見えて、非常に味のあるキャラクター達だ。

パワポケスタッフはいい意味で容赦がない方達ばかりだ。物語が面白くなるためなら、死・鬱・理不尽を混ぜ込むのも朝飯前なのだ。
そして、それぞれのキャラクターに人間味がふんだんに含まれている。まるで伝記やルポルタージュがごちゃ混ぜになったように、楽しさつらさを追体験させてくれる。

だからこそ、属性のおもちゃ箱かのごとく多種多様なヒロイン・キャラクターが出てくる中でも、みな魅力的なキャラクターに仕上がっているのだと思う。

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パワポケを初めてプレイしてからもう15年近くになるだろうか。
色々なゲームに触れてきたが、間違いなくパワポケは僕に最も大きな影響を与えてくれたゲームだ。
その理由-パワポケの最も面白い点の2つ目の理由-が「人間観・価値観を与えてくれたこと」だ。

上に述べた様に、パワポケにはキャラクターのるつぼの如く多種多様なキャラクターがいる。彼らの生き方や行動原理を見ていくことで、様々な立場のキャラクターの人生や哲学を追体験させてくれた。その中で多数の名言が生まれ、そのたびに価値観をアップデートすることができた。
パワポケ7内の『悪の反対は善、善の反対は悪じゃ。正義の反対は、別の“正義”または“慈悲・寛容なんじゃ”。』あたりは特に有名な台詞だろう。

また、物語の中で、多くの哲学的思想や歴史オマージュにも出会えた。「実在する理不尽」にも出会えた
SFファンタジー世界かと思いきや拝金主義・殺戮主義・賄賂が飛び交うシナリオがあったり、身体の限界を科学技術で補おうとした結果、「機械と人間の狭間」で悩まされるシナリオがあったり、売れない劇団員ヒロインが芸能事務所で枕営業を提案されるシナリオがあったり………
ここでは数えきれないくらい魅力的なシナリオが溢れていた。

それらを吸収していく過程で、いつしか現実の理不尽や困難な課題・難しい思考状況に直面したときに、「これはパワポケで見たことがあるじゃん」と思うようになっていた。
まさしくパワポケが人生の縮図になっていたのだ。

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パワプロクンポケット。
シリーズ最初の作品から20年以上愛され続けているゲームだ。
シリーズは完結してしまったけど、今でもコアなファンがとても多いゲームだ。

ここまで小難しいことを書いたが、それほどパワポケは魅力……いや、“魔力”を持ったゲームだ。

1人でも、パワポケの世界に足を踏み入れてくれる人が出てくれたら、これ以上ない喜びだから。

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