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少しパリから離れて考えてみたこと

ベルギーの国境にほど近い町に滞在していた。

パリ市内は家賃も物価も上がって年々住みにくくなるが、パリから電車で1時間ほど離れると、だいぶ住みやすくなる。
古い家つき400平米の敷地が2,000万円くらいで買えたりする。
古い家は自分で直す必要があるし、フランスでは家を買う時にひとを挟まないといけないのでその手数料等もかかるから2,000万円では済まないのだけれど、石造りの広い庭つきの一軒家がその値段で買えるのは魅力的。
しかも、日本と違ってフランスは家の値段が下がらない。
手入れをすれば買ったときよりも高く売れる。
つまり、一度買って気に入らなかったら、ローンを払っている途中であっても別の人に売って、別の家を探せばいいのだ。

ベルギーでは2軒の家にお邪魔した。
一軒目は、小さな小学校かな?と思うほど広い。
もう一軒は、ルイ16世の時代の家具を古物商から買い譲り受けたり、古い家からでた木材をもらって家の増築をしたりして、こだわりのある美しい家であった。
庭にはりんごの木が4本、大きな松の木、あらゆる野菜が植わった畑、手作りの東屋、手作りの作業場、いのししの出る森と川、馬の通れる道…
見える範囲は自分の敷地だということだった。
松の木からは、松脂が取れる。
太陽に照らされて、幹から流れ出る松脂がキラキラしていた。
まだ新しい松脂はとてもいい匂いがする。針葉樹林の若芽のような匂いなのだろうけれど、山を吹き渡る緑そのものみたいな匂い。
とれたてはべたべたするばかりで扱いが難しいので、固める方法をネットで調べてみよう。

パリに住んでいるのは楽しいし、あらゆる文化的なことに触れられる。
見たいもの、行きたい催し物が絶えず押し寄せ、いつの間にか通り過ぎてしまうほど。
世界中から人も集まる。
文化や芸術に触れることが教養として大事であるから、週明けには必ず「週末何を見た?よい映画あった?いい舞台を見た?」という会話になる。

目まぐるしく動くパリの中で、わたしは普通にただ生活をしながら、自分の創作を続けながら、絶えず、生きることと創ることを両立することの難しさを痛感している。

パリからどんどんアーティストが離れて行っている。
芸術を続けながらパリで生きてゆくのは、大変すぎるから。
わたしも、考えてしまうな。




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