上杉あき 『夢と日常』 (静岡県三島市)
絵はうそがつけるからいい。雨の日に青空の写真は撮れないけれど、雨の日に青空を描くことならできる。そっけない窓辺に花を飾ることもできる。あの時食べたトーストの味をいつだって思い出すためにつく嘘ならどんな嘘を筆に乗せてもいい。夜の街にキリンがいたっていいし、行ったことない世界に旅することだってできる。夢みたいな光景がたくさんあったっていい。遠くの景色を描くために空を飛んだっていい。葛飾北斎だって空も飛べるはず。
ある日、神奈川県の真鶴という小さな港町に移住した友人から手紙が届く