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電気ブランの紅茶割り

居酒屋で隣にいた男が、電気ブランをロックで、と言った。ストレートで飲むのが美味しいのに、と思ったが、彼はロックの美味さを知っているのだろう。ちょうどわたしがストレートで飲む美味さを知っているように。 電気ブランは浅草神谷バー発祥のブランデーをベースとした酒である。その名は、明治時代にハイカラなもの、もの珍しいものの頭に電気◯◯と付けて呼ぶのが流行っていたことに由来する。 電気ブランデー、転じて電気ブラン。森見登美彦の小説『夜は短し歩けよ乙女』『有頂天家族』などに登場する幻

    • 自家用車と父親、生まれた街について〈エッセイ〉

      生まれた街について話すことはその街の匂いを確かめるようなものだ。 22年前の8月11日、私は夏に北海道の旭川市で生まれた。いちばん古い記憶は0歳の冬に見た札幌雪まつりで、原風景があるとするならば、この日の雪景色といえる。次の春には秋田へと引っ越し、その後またすぐに千葉へと越したので、北海道に居た頃の記憶はこれしかない。2年前まで住民票を北海道に置いていたが、その場を去って20年が過ぎたので、父親を除いた家族の住民票を千葉へと移した。それに伴い、車のナンバープレートも旭川から

    電気ブランの紅茶割り

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