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【001】少し窮屈な毎日へ

「どうして彼のことが好きなの?」その問いに、私は答えられなかった。

私が彼のことを好きになったのは5年前。

それまでは少しだけきになる存在だった彼と初めて目があったとき。そこから一生懸命、彼に何度も会いに行った。

彼女が彼を好きになったのは比較的最近。彼女は私に彼の好きなところ、自分がなぜ彼にこんなにも引かれているかを話してくれた。その流れで聞かれたのが「どうして彼のことが好きなの?」だった。

ちなみに私にとっての彼と、彼女にとっての彼は違う。

結局、その日私は答えられなかった。そして今も答えられない。彼と私は一生話すことなんてない関係だし。はやりのヒット曲の言葉を借りるとすれば「ずっとそばにいたって結局はただの観客だ」

でも、この5年。私にはたくさんの彼との思い出がある。(ちなみに彼の中には私との思い出などない)そういう一つ一つが積み重なった結果、今もしっかり好きでいる。だからこそ、言葉にできない。仕草とか目線とか、そんな細かいことの一つ一つを説明するのは難しいし、言葉にするのはあまりにも野暮だもの。

でも、言葉にできる彼女と言葉にできない私を比べたとき、私は劣るんだろうか。少なくとも、その場にいた何人かの目には彼女が本物のファン、私がにわかファンに映ったに違いない。なんで他人に好きの度合い図られなきゃだめなんだろうと悲しくなってめんどくなった。

だいたい誰にでも話せるほど、軽い話じゃない。うん。

好きでいることに、大事でいることに理由などいるのだろうか、人も物も出来事ももう少しだけ自由に好きでいたい。







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