七色に変わる熟れ

私はカメレオンの自覚がある。
基本的には相手に合わせる。相手の出方を常に窺って、それに対応した返答を送る。
そしてそれは特段自分を押し殺しているわけでもない。
自分の時間であっても意識の中で欲求や願いはあまり存在していない。
好きなことは特にない。
厳密に言えば、意識に対しては感情を特に抱かないのだ。
顕在意識に潜在意識があまり干渉しない感覚、この二つがリンクすることが難しいという感覚。
あくまで感覚だ。これが心理学やら哲学やら何やらの世界ではありえるはずがないなどと完全否定されてしまうかもしれないので控えめに主張しておく(正直、心理学という非自然科学の分野で論拠を延々と語られても「そういうものなんですね」としか思わないが)。
単純に感情を出すのも感じ取るのも下手くそということだ。

あらゆることが悲しみに満ちあふれているような気がしてならない。
でもそんなことをいちいち嘆いていたらキリがないため感情を見過ごして生きていく。
私の唯一の言える心の底からの願いは「自然に還らせてくれ」。
もう、傷つきたくないんだ。
自分の傷も、他人の傷も、この世自体の傷も全部、見たくないとずっと考えている。

「本当の私」というのは、私にとって「言葉など脳内に浮かばずにただひたすら涙を流している時」だと今の私は思っている。
人生で二回ほどこれを経験したが、本当に素の自分でいられた感覚がした。
本能で泣くこと。
何かの事象に対して悲しみを感じ泣くのではなく、何度も何度も見過ごしてきた悲しみという澱を一気に流す時。
私が私でいられた気がした。

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