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太陽と虹が重なる頃に…(3)

奏がみかんを口にすると目の前は眩しく輝き目を開けていられなくなった。しばらくすると眩しさもなくなり目を開けると目の前にはさっきいたはずの海が広がっていた。
「さっきの海…?」
奏に訊こうと横を見ると明らかに奏の服装が変わっていた。
「その服……」
悠也は驚いた。
「天空界にいる時と同じ服をこっちの世界で着ちゃいけないっていうルールがあるの。全くファッションに興味がない悠ちゃんが一生懸命選んで買ってくれた服だよ?覚えててくれたんだね?」
奏では泣きたい気持ちを必死に堪え笑った。
悠也ははっとした。
「もしかしてここの海って……」
「私が死ぬ二日前に二人で来た海だよ」
笑顔で言う奏の顔は穏やかだった。
「でもどうして…… それにさっきまで夕方だったのに朝になってるし……」
「それは、一番記憶に残ってたからじゃないかな?それに天空界とこっちの世界では時差があるし、天空界の方が時間がゆっくり進むの」
そう言い奏では微笑んだ。
そんな幸せな時間を過ごしていると遠くの方で黒い帽子を被った男が犬と追いかけっこをしているのが見えた。
「あ、おじさーーん‼」
悠也は大声で男を呼び、大きく手を振った。すると男は気が付き、こちらに歩いてきた。
「よぉ、隣にいるのはお友達かい? 彼女にはちゃんと会えたのか?」
男は茶化す様に悠也に訊いた。
「あ、あのこの子が彼女です」
悠也が照れながら言うと男の顔がとても真剣な顔になった。
「お、おい。こりゃマズいことになったな…… 」
男はとても焦っていた。
「マズいこと?」
悠也は男に訊いた。
「この世にもう存在しない人間がこの世にいると色々とヤバい。 これはヤバい。とにかくヤバい早く天空界に送り返すんだ‼」
男は身振り手振りを付けなながらそう言い、その場を駆け足で去っってしまった。

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