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小説 異世界辺境領で慎ましく過ごしたい1〜5

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冴えない男がのどかな田園風景の中をボストンバックと紙一枚を持って歩いていきます。辿り着いたのは古びた村役場でした。

今日、会社を辞めて、東京を出てきた。大学の入学を機に上京、卒業し、そして都内のIT会社に就職した。働いてから2年、そこはブラック企業だということが分かった。日々残業、残業、過剰労働は当たり前、上司には無能といびられ、後輩には嘲笑った視線を浴びせられ、悪口やクスクスと笑われる毎日を送っていた。鬱病を発症してしまい会社を退職に追い込まれ、それを機に人里離れた田舎へ引越すことにした。鳥や虫の声が聞こえるのどかな風景。山、山、山、見渡す限りの山、広大な黄金の田んぼ、空気が美味しい、俺の鬱屈した心が浄化されていくようだ。この紙は転入届。この届出を出さないと村には住めない。転入届は事前に書いておき、あとは提出するだけ。小さな村で人がいないかと思ったが、市役所の入り口には行列ができていた。

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