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きょうの画材「6: マロンクリームえんぴつ」


おまじないの話

これまでしたためた画材の記事。
実は、全てに使っているのに、どの記事のリストにも載らない
そんな画材があります。
下絵のアタリに使っている一本の鉛筆です。

ちびてきたので、普段は補助軸をかぶっています

なぜかといえば、あえて書く必要が無いからです。
これは私の好きなマロンクリームがプリントされているだけの
何の変哲もないHB鉛筆です。
機能的にはこれをあえて選ぶ理由は存在しないんです。

アタリ用の鉛筆を削るためだけのナイフ。

学生の頃、鉛筆デッサン用に購入した肥後ナイフを使って
この鉛筆を削るのが絵を描き始める時の儀式です。
物理的な意味はありません。現に他の鉛筆類はすべて削り器を使います。
これは私の極めて個人的な思い入れから生まれた、
おまじないのようなものです。

「愛」という付加価値

私は昔から、実用品は飾りけのない物を選んできました。
機能的に事足りればいいと思っていたし、
一度にあまり多くの情報が目に入ると疲れてしまう…
心境の変化があったのはここ数年、
原画やアートグッズを自身で販売するようになったからです。

ふとした瞬間、目が合うマロンクリーム。

グッズは装飾要素を上乗せする程に、機能は同じでありながら
販売価格はどんどん上がってしまいます。
原画に至っては機能を持たない、紙に塗られた顔料の層です。
それをあえて買わなくたって私たちは暮らしてはいける。
それなら、なぜあえて買い求めるのか?

つるんと消えた、マロンクリームの筆あと。

何故かと考えたら、それは、やっぱり
「愛」なんじゃないかと思うわけです。
別のHB鉛筆を使っても、最終的な原画の仕上がりは変わりません。
このマロンクリームというキャラクターを愛している、というだけで
私はこの一本の鉛筆を使い続けています。

買える、というやさしさ

ホルベイン透明水彩で彩色。

愛は生身の人間に求めてもままならないもので、
愛しても返ってくるとは限らないし、
時には愛する人にひととき振り向いてもらうために
身も心も削り続ける人もあるのでしょう。

色鉛筆でしめて、金でおめかし。

その点、ものいわぬ物は相手を選んだり嫌う事がありません。
お金を払えば自分の物に出来て、誰にでも静かに寄り添ってくれます。
そこに愛を探す事を寂しい行為という人もあるかもしれません。
でも私は、それが「物」というものの持つ
限りないやさしさだと思っているのです。

私は昔から友達の少ないはみだし子だったので、
物たちのもつやさしさをつい噛みしめてしまいます。
私も、誰かにとっての「愛すべきもの」になれるような
作品を目指して精進していきたい、そんな物思う夜です。


今回使った画材

・サンリオのプリント鉛筆(HB/メーカー不明)
・ホルベイン アルビレオ水彩紙
・名村大成堂 蒼明(小)
・ホルベイン透明水彩
・色鉛筆(ホルベインアーチスト、三菱ポリカラー)
・吉祥顔彩 パール金

今回もご覧頂きありがとうございました。楽しい画材ライフを!

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