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「任天堂、時価総額10兆円 ブレない独自路線に強み」に注目!

任天堂、時価総額10兆円 ブレない独自路線に強み - 日本経済新聞 (nikkei.com)

任天堂の株価が10日の東京株式市場で前日終値比364円高い7902円に一時上昇し、時価総額が10兆円を超えました。IT(情報技術)が日進月歩で変貌を遂げる令和時代にあって「枯れた技術」で面白みを出す独創性など、ブレない姿勢が評価されています。知的財産(IP)に裏打ちされた映像事業への期待も膨らみますが、ニンテンドースイッチから後継機への円滑な移行という課題もあります。

10日の任天堂株は3日続伸しました。新NISA(少額投資非課税制度)を意識した個人投資家の先回り買いなどで、2023年末に16年ぶりに上場来高値を更新したのに続き、10日は2007年11月以来の時価総額10兆円超えとなりました。

東証で10兆円を超える大型株はトヨタ自動車やソニーグループなどグローバル企業が多く、任天堂は時価総額上位10社で唯一のエンタメ専業になります。

2023年は4月公開の「マリオ」の映画の世界興行収入が13億ドル(約1880億円)を超え、11月には人気ゲームソフト「ゼルダの伝説」を実写映画化すると発表しました。足元の株価上昇には映像事業への期待も織り込まれていますが、任天堂のゲーム事業が再評価された面も大きいです。

販売7年目に入ったスイッチは2023年4〜9月期の販売台数が684万台と、前年同期より2%増えました。ゲーム事業のピークは一般的に3〜4年とされています。一時的とはいえ7年目の販売が前年を上回るのは「ゲームの歴史にない出来事」(東洋証券の安田秀樹氏)とのことです。

別のアナリストは「任天堂は流行に影響されない、北極星のような会社。その独自路線が評価されている」とみます。

最近はゲーム機や対応パソコンの高性能化が進み、メタバース(仮想空間)や拡張現実(AR)向けなど様々なデバイスが乱立。群雄割拠の様相を呈すなか、任天堂は最新技術にこだわらない姿勢で他社と一線を画しています。昔から一般に普及した「枯れた技術」を工夫して面白さを引き出す開発思想を重んじています。

例えば、スイッチのGPU(画像処理半導体)の処理能力はプレイステーション(PS)4に及ばず、液晶画面も旧世代でセンサー類の多くも汎用品です。1秒間に表示できる映像コマ数「フレームレート」も最大60とPS5の半分にすぎません。

対応ソフトもGPUの処理や容量を抑えるため、PS5向けなどで主流の実写のような高精細な絵柄ではなくアニメ調が多いです。2023年発売のゼルダの最新作の描写もアニメ調です。必要容量が100ギガ(ギガは10億)バイトを超えるソフトが主流になるなか、ゼルダは容量を16ギガバイトに抑えました。

一方で、累計販売が1000万本を超える「スプラトゥーン3」(2022年発売)は、新しい発想から生まれたルールでファンの心をつかみました。利用者が1億人を超える人気ゲーム「フォートナイト」と同じシューティングゲームですが、敵を倒した数やその速さではなく、インクを発射し床を塗りつぶした面積で勝敗を競います。動く敵を追う難しい動作が必須ではないため、初心者でも遊びやすいです。

ファミコン草創期に「高橋名人」と呼ばれプロゲーマーのはしりのような存在となった高橋利幸氏は、任天堂のものづくりについて「必ずしも画質は重視せず、ゲームの面白さを追求する姿勢は(1983年のファミコン発売以来)40年間変わらない」と指摘します。古川俊太郎社長は「娯楽は他と違うからこそ価値がある」と話します。

任天堂の最大の難関は、スイッチの後継機へのバトンタッチです。スイッチが累計販売が1億3千万台を超える歴史的なヒットになったがゆえ、反動を懸念する声は根強いです。現行機が堅調に推移するだけに、後継機が発売されても買い替えが進まない可能性もあります。

投資家の脳裏をよぎるのは「WiiU」の失態です。ヒット機「Wii」の後継の同機は液晶画面付きのコントローラーが話題になりましたが、独特の操作感からゲーム会社のソフト開発が進まず苦戦しました。累計販売は1356万台にとどまり、任天堂が3期連続で営業赤字に陥る要因となりました。

市場は2024年の発売が噂される後継機の価格に関心を寄せます。部材価格の高騰や性能の向上を受け、後継機の価格はスイッチ(標準モデルは3万2978円)から引き上げが見込まれます。「後継機が500ドル(約7万2000円)近い価格になれば、スイッチをけん引したゲームのライト層は購入をためらう」(アナリスト)との見方があります。

時価総額が10兆円を超え、かつてないほど成長への期待が高まるなか、そのハードルを超えていけるのか。スイッチが発売後の2018年に社長に就任した古川氏は初の大仕事に挑むことになります。

任天堂は2023年にスーパーマリオブラザーズの映画をヒットさせ、スーパーマリオの関連ソフトなども好調です。そして、11月にはゼルダの伝説の実写映画の企画開発の開始を発表しました。スーパーマリオでのヒットをゼルダの伝説でも再現できるのかにも関心が集まっていると思います。

今後のスイッチの後継機も期待が高まる中、今後の任天堂の取り組みに期待しています。