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美術館訪問記録

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京大ミュージアム同好会(CoMoKU)の美術館訪問記録
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民藝 MINGEI

 東京都目黒区にある日本民藝館の所蔵品を中心に、各地の民藝を展示している。民藝運動の立役者、柳宗悦による蒐集の回顧録も交えながら民藝の歴史を辿る。  民藝という概念の根幹をなすのが「用の美」というキーワードだ。民衆の生活に根ざしたデザインに宿る美しさこそが民藝の美であるという。展示品にあった竹の茶碗籠(Ⅱ-2-21)、燭台(Ⅱ-3-19)、芯切鋏(Ⅱ-3-21)などは、用途や制作方法がデザインに与える制約が大きい気がする。そういった「都合」に導かれて顔を覗かせる不意の美しさ

聖地 南山城

 京都府南部、田畑が広がるのどかな地域「南山城」はかつて山城国と呼ばれていた。木津川がL字型に流れるこのエリアは、古代から交通の要衝として栄え、早くに仏教が流入した。奈良と京都の仏教文化の交差点にあった南山城の寺々は多くの仏教美術を今に伝える。  南山城の当尾(とうのお)の里にある浄瑠璃寺には、平安時代後期につくられた九体阿弥陀像が祀られている。その五年に及ぶ修理の完了を記念して開催されたのが本特別展「聖地 南山城」である。展覧会には全9体の阿弥陀坐像のうち、その1とその8

並河靖之 七宝と建物

 輸出向けの華美な品物と考えられ、その価値が正当に評価されてこなかった¹明治工芸に、近年注目が集まっている。昨年は京都市京セラ美術館で「綺羅めく京の明治美術 —世界が驚いた帝室技芸員の神業」が催され、そして今年はあべのハルカス美術館で「超絶技巧、未来へ! 明治工芸とそのDNA」が開催される予定である。  明治工芸の中でも私が特に心惹かれるのが並河靖之の有線七宝だ。有線七宝とは、平たい金属のテープを図柄の輪郭線に沿って折り曲げ器表面に接着し、そこに釉薬を流し込む技法で作られた

画家との対話

 「画家に質問したり感想を伝えたりするように作品を鑑賞する」というコンセプトに惹かれ、訪問することを決めた。  展示されているのは主に神戸にゆかりのある現代の西洋画家の作品である。いくつかの作品にはキャプションがつけられ、そこで作品の一解釈を提示したり、観客に作品の解釈を問いかけたりしている。一般的に博物館では「個人的な解釈」を示すことはタブー視されているのではないだろうか。しかし、西洋画に疎い私にとっては、むしろそれが自分なりの鑑賞をするために役立った。情報を伝える役割に