【第628回】『ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期』(シャロン・マグワイア/2016)

 シリーズ開始から11年、『ブリジット・ジョーンズの日記』で32歳だった恋とダイエットに夢中なブリジット・ジョーンズ(レネー・ゼルウィガー)は43歳になっている。だが傍らにはパートナーがおらず、未だに独身の身。一人ぼっちで迎えた誕生日、ロウソクの火は1本だけ。彼女は頼りない火を一気に吹き消すと、ケーキとアルコールのやけ食いに走るしかない。ステレオから流れて来る『All By Myself』は32歳の彼女を慰めた名バラードだったが、アラフォーになった彼女にはしっくりこない。House Of Painの『Jump Around』(懐かしい!!)に曲を変え、終始ノリノリでEverlastパートをラップするブリジット・ジョーンズの滑稽な姿。右手に持った白ワインは酔いでカーペットの上に滴り落ちる。12時間前、誕生日にようやく電話がかかってきたかと思えば、威勢の良いママのパメラ・ジョーンズ(ジェマ・ジョーンズ)の元気な声。「ネットで精子を提供している友人がいるのよ」という勧誘にうんざりしつつも、婚期が遅れに遅れた四十路女は卵の運命にナーバスになるばかり。そんな折、飛行機事故でダニエル・クリーヴァー(ヒュー・グラント)の訃報が届く。かつて愛した男の突然の死、お葬式にはロシア系の美女ばかりが訪れる女たちの光景をブリジット・ジョーンズはいつものように揶揄するが、一番遅れてかつて恋仲だったマーク・ダーシー(コリン・ファース)が、最愛の妻を連れて一番前の席に座る。愛した2人の男性との永遠の別れと束の間の再会。ブリジットの恋愛ゲームが再び始まる。

 本国イギリスのみならず、世界中で特大ヒットを記録した人気シリーズ『ブリジット・ジョーンズの日記』の3作目にして完結編。ブリジット・ジョーンズとレネー・ゼルウィガーは1969年生まれの同い年。2001年に製作された『ブリジット・ジョーンズの日記』では現実に則した32歳の設定だが、3年後の『ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12か月』では33歳、そして今作では43歳と実際は47歳になったレネー・ゼルウィガーは現実とは異なる映画時間を生きる。なぜ43歳なのか?結婚だけなら運命の人が現れれば幾つになっても可能だが、43歳になったブリジットにとって出産へのリミットは確実に迫っている。かつて大恋愛を繰り広げたマークとダニエルとの三角関係だったが、別の女性と結婚したマークは別居し、現在離婚調停中の身。対するダニエルは飛行機事故で不幸な死を遂げた。30代をアルコールとタバコが手放せないぽっちゃり系女子として過ごしたブリジットも今は幾らかほっそりし、タバコもやめてから1000日を数える。出版社からテレビ局へと華麗なる転職を果たしたものの、何でもやらなければならないリポーターの仕事は激務だったが9年間、無我夢中で頑張ったブリジットは今やテレビ局の敏腕プロデューサーにまで昇進を果たしている。恋はダメだったが、仕事のキャリアはいたって順調。人気番組『ニュース・バード』のスタッフには、かつてブリジットをこき使ったチーフ・プロデューサーのリチャードまでが彼女を支える。このまま本気で昇進の道を進むかに見えたヒロインの前に、インターネットを駆使した新しいメディア制作を目論むやり手の20代アリス(ケイト・オフリン)がブリジットのやり方にことごとく異議を唱える。このアリスの風貌がいかにも気の強い女で笑える。ぱっつん前髪にお団子、真っ赤な口紅で部下にイケメンを侍らせる。仕事の停滞がアラフォー女を恋に走らせる展開も程良い。

 シャロン・マグワイアからビーバン・キドロンへと交代したシリーズの結びを、ユニバーサル・ピクチャーズは再びシャロン・マグワイアに任せる決断をしたが、結果的には吉と出たように思う。男が聞いたらびっくりするような歯に衣着せぬ辛辣なガールズ・トークの数々 笑。ラブコメのオファーを断り続けるヒュー様の代わりにジャック(パトリック・デンプシー)というイケメン男性を用意するが、これがダニエル・クリーヴァーと似たようなハンサムなプレイボーイで、いかにもブリジットの好みをくすぐるタイプ 笑。「恋愛マッチングサービス」の方程式で巨万の富を築いた男というジャックの設定が、全世界的に草食化社会になりつつある現代への風刺をも含有する。かくしてまたもやほとんど笑わない堅物なマークと、いつも笑顔が絶えない優男ジャックとの対比に、四十路になったブリジットの心は揺れる。シリーズ開始から15年の月日が経過したが、老け顔だったコリン・ファースはそれほど老けていない。流石にレネー・ゼルウィガーは老けたが、それ以上に老けたのがブリジットの友人連中を演じたシャザー(サリー・フィリップス)、ジュード(シャーリー・ヘンダーソン)、トム(ジェームズ・キャリス)の女友達2+ゲイ友1の3人組。彼女たちの容姿の変化に15年間の月日が滲む。いつもセンスが良かったシリーズの選曲も『All By Myself』やMarvin Gaye『Lets get it on』を筆頭に、SISTER SLEDGEの『WE ARE FAMILY』、Dionne Warwickの『Walk On By』、McFadden & Whiteheadの『Ain't No Stopping Us Now』などの名曲たちが彩る。最後までわからない恋愛ゲームの行方、ブリジットは果たしてどちらを生涯の伴侶としたのか?男が女を選ぶ時代から、女が男を選ぶ時代へ。まさに女性上位時代の現代を象徴するシリーズ有終の美である。

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