『魔女様の人形』【掌編|おねショタ】


 爪先は輝安鉱。四肢は金雀枝。頭と胸には鳥兜の花弁。
 茜草の鬘を被せ、瞳はよく研磨した胆礬。
 睫は馬酔木の花で可憐に飾り、頬と唇は鵯上戸の実でふっくら紅く。
 最後に涙を一滴たらせば擬魂が宿り、魔女様の人形は出来上がる。

「さぁ行っておいでお前たち。この世界にはいい薬」

 如何な欲求も満たすと評判の美しい愛玩少年は、彼や彼女をその腕に抱き、永久に醒め得ぬ甘い夢の世界に誘う。そうして悪徳商人や傲慢貴族が、ひとりひとりと消えていく。幼き日の魔女様と弟御を卑しめ虐げ辱めた、その同胞が消えていく。

 今は亡き最愛の人。その面影を模した人形の頬を撫でながら、魔女様は涙する。
 その透明な雫が枯れるまで、彼らは生まれ出でるのだ。


***********
Twitter300字SS企画(2019年2月お題『薬』)参加作品です。

頂いたカンパは、同人誌での作品発表や品質向上にありがたく使わせて頂きます!