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真綿で首が締まらないように

両手では抱えきれない、膨大な感情に押し潰されそうになることがある。到底言い尽くせないような質量。そんな時は、あれやこれやと言葉をあてがって「今はこれしかない」と納得する。自分に覆いかぶさり、息の根を止めようとしてくる重さたちを一つ一つ剥がしていく。それしか救いがない。

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生真面目さを擬人化したら、きっと彼になる。そんな人が、自ら人生にピリオドを打った。燦然と輝くお星様が、ある日の夜、空を見上げたら跡形もなく消えていたかのような喪失感。ずっとそこにいると思っていたのに。ずっとなんて、なかった。

自殺した家族を持つ人の、それも寿命だったと思うしかないといった旨の言葉はあまりにも重かった。そう思うしか喪失や後悔を乗り越えられない。どうしてだろう。同じ死でも自ら命を絶ったと知るだけで、首元を掻きむしりたくなるもどかしさに襲われるのは。本当かどうか分からない直近のエピソードを目にして、体の中で言葉にならない何かが渦巻く。

彼のことは作品や出演でしか知らない。それもあくまで人生のほんのちょっとの表出だろう。そこから伺うことができたのは、実直、真摯、ストイックといったところ。それが今回の出来事と何かしらの因果関係があるかは定かではない。それでも、やはり思ってしまう。

生真面目さという真綿が自らの首を絞めない世にしたい。真面目で地道であることが辛い世の中ではないか。才能の有無ではなく、誰もがより良い自分でありたいといった願望に押し潰されない、そんな世界に生きたい。






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