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井上さんと一緒に、「もったいない子育て」をやめる旅に出た #31

長期的な視点で見る「効率の良さ」
対症療法に陥りがちな子育て②

 対症療法の視点では「喜びどころ」がどんどん見えづらくなります(#30からの続き )。なぜでしょう。まず、よくある悩みを見てみます。

 子どもが失敗しないように先回りして手を出してしまう――。

 ごくごく単純化した例を挙げます。朝、子どもに身支度を任せると時間がかかる。時間がかかると親も子どもも遅刻するから、親がやってあげる(例Aとします)。「遅刻は困る」といった親の気持ち、あるいは子どもに任せた結果、失敗して子どもの気持ちが揺れる事態を避けたい。そのせいで余計に時間と手間がかかるのを恐れているのかもしれません。

 一方、スモールステップで子どもができそうな身支度を設定して、徐々に任せていく、という手法があります(例Bとします)。一つできれば、次へつながります。「できた!」という自信が次の「やりたい」につながり、次の挑戦の土台になります。

 例Aは対症療法、例Bは根本解決といえます。例Aを続けていると、子どもの失敗や練習の機会が奪われます。そして「身支度はいつも親がやってくれるもの」と誤解することもあるでしょう。

 例Bを実行するためには、余分な時間に加え、親にも心構え(子どもを待つ忍耐力や、失敗したときの気持ちの揺れを受け止める余裕など)が必要になります。また、子どもが次にできそうなスモールステップはどれなのかを見極める観察力が求められます。でもその子に合った小さな挑戦が見えれば、親は喜びどころが分かります。

 上記は、単純化した例ですが「身支度」を違う言葉に置き換えても当てはまるケースがあるかもしれません。

 「人は往々にして目先の効率の良さに囚われがちですが『長期的な視点で見た場合の効率の良さ』も考えてみるといいと思います」と井上さん。

 子育ての醍醐味の一つは、長期的な視点を持ってプロセスを見て、子どもの小さな成長を「喜べる」ことだと思います。対症療法の子育てを続けていると、長期的な視点が失われ、子育てが苦しいものになりがちです。

 一方、いったん子育ての醍醐味を味わうことができた親は、子どもの次の挑戦を待つことができそうです。すると、いいサイクルが回り出すでしょう。

 この点について「コンパッショネート・システムズ」の観点から書いた続編はこちらです。


(#32につづく)




書き手:小林浩子(ライター・編集者/小学生の親)

新聞記者、雑誌編集者などを経て、フリーランスのライター・編集者に。 自分の子育てをきっかけに、「学び」について探究する日々を重ねる。現在、米国在住。



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