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Eugenの備忘録その13-4/28 インキネン指揮日フィル《クレルヴォ》

4/28 ピエタリ・インキネン指揮日本フィル東京定期演奏会(19時より、於サントリーホール)
ソプラノ:ヨハンナ・ルサネン
バリトン:ヴィッレ・ルサネン
男声合唱:ヘルシンキ大学男声合唱団、東京音楽大学

シベリウス:《クレルヴォ》

この曲は特に第3楽章で劇の要素が濃く、バイロイトに登壇しているインキネンにうってつけのプロと言われるがまさしくその通り。さらさら流してゆく第1楽章からペース配分に無理がなく、それでいて劇場のような臨場感を感じさせる。全曲の白眉はやはり物語の大きな転換点たる第3楽章。ヘルシンキと東京音大の混成合唱、ダブル・ルサネンによるクレルヴォ兄妹がいずれも緊迫感溢れるドラマを提供した。とりわけ後半の兄妹の真実の明かされる一幕でのソリスト2人の悲痛な語りに大いに感銘を受けた。第3楽章のこうしたドラマは氏の得意なワーグナーの《ヴァルキューレ》にも通じるものがあり、今回の演奏機会がドンピシャだったことを窺わせる。第4楽章のきびきびした行進も見事だが、フィナーレの荘厳で悲劇的な冒頭の主題の回帰でも歌劇場指揮者たるインキネンの長所が際立った。

追記
《クレルヴォ》の第1楽章と第5楽章で繰り返されるテーマの親しみやすさがまるで大河ドラマのテーマのようです。さらに、この曲の始まりと終わりはホ短調で後の第1交響曲と同じキー。第1交響曲の作風にはこの曲に近い悲劇性を感じます。《クレルヴォ》は、シベリウスの第0交響曲というべきでしょうか。

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