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【読書メモ】アメリカでは経済学のビジネス実装が進んでいる。【そのビジネス課題、最新の経済学で「すでに解決」しています】

「経済学のビジネス実装」の第一人者の経済学者・実務家による経済学のビジネス活用事例をまとめた一冊。

GAFAを始めとする海外で高い利益率で成長している企業では、経済学の博士号取得者を高級で雇い、経済学の学知をビジネスに取り入れています。

一方、日本では「経済学は、机上の学問で役に立たない」との認識が強く、周回遅れの状況です。

エコノミクスデザイン社で、先端経済学のビジネス実装に取り組む経済学者・実務家による「経済学に対する認識を変える」一冊です。

【おススメの読者】

  • 経済学は、私たちの暮らしに役立たないと思っている方

  • 経済学がビジネスにどのように役立つのかを知りたい方

  • 既存のビジネスフレーム・手法以外に、何かヒントがないか探している方

【本書の概要】

2022年に出版された240ページ程度の書籍です。

経済学には、ビジネスに有益な学知が多く眠っています。

世の中の課題の多くは、過去に同じか類似した課題があり、先人たちが試行錯誤しています。

学問はそれら過去の経験を整理して、体系化し、未来に使える道具として拵えたものです。「車輪の再発明」で時間を無駄にしないためには、巨人の肩の上に立つことが賢明です。

本書では、経済学の学知がビジネスにどう役立つのかを事例で紹介するビジネスマン必読書です。

【本書の「なるほど!」ポイント】

自分への備忘録として、本書を要約しています(原文ママではありません。興味がある方は購入をお勧めします)

<経済学の有用性>

  • 経済学は、暮らしの改善やビジネスの利益拡大に役立つ武器である。「学知というサイエンス」「現場への実装というエンジニアリング」こそ、経済学のビジネス活用の軸

  • 職人的な感覚は、科学と対立するものであることよりも、科学と互いに補い合うものであることのほうが多い。組織に蓄積された勘と経験に、学問の光を当てることで、優れた勘や役に立つ経験が「見える化」されることもある

  • 会社の利益を増やす方法として、「売上を増やす(付加価値を上げる)」と「コストを下げる」が代表的であるが、経済学では「値上げをする」という第三の選択肢がある

  • 「利益=(価格-平均コスト)×販売量」。値上げによるマージン率の増加が、販売量の減少率を上回ると利益は増加する。利益を増やすためには、売上を犠牲にするほど積極的に値上げすべし

  • 会議において、5人から人数を増やしても判断の良さが上がるわけではない。その原因は「自分が頑張らなくても誰かが頑張ってくれるという手抜きの発生」「一人当たりの発言時間の減少」がある

<FSP-Dモデル>

  • 利益を最大化する「FSP-D」モデル。F:フリー、S:ソーシャル、P:価格差別(プライス・ディスクリミネーション)、D:データの4つを用いてビジネス戦略を立て、最大限の利益を目指す

  • F:フリーとは、モノやサービスを無料で提供し、多くのユーザーを獲得する戦略。大多数の無料ユーザーと一部の有料ユーザーの2グループから構成される

  • フリー戦略のポイントは、その製品・サービスを利用する人が増えれば増えるほど、利用者の満足度が高くなるネットワーク効果

  • クリティカル・マス(ネットワーク効果によって好循環が起こり始めるユーザー数)を超えると、加速度的に利用者が増え、顧客満足度が高くなり、さらに利用者が増える「ファン量産」状態に入る

  • 無料版でも「すごいサービス」と感じさせることがネットワーク効果につながる。ユーザーが無料版でいい体験をする場合のみ、有料版の売上が増加することが実証研究で明らかにされている

  • 有料版を買って初めて機能が万全となるのではなく、無料版でも万全だったところ、有料版を買うことで、さらにいい体験ができるようにする

  • フリー戦略は、黒字転化まで、最低でも5年は見ておいたほうがいい。Twitterでも黒字転化するまで10年以上かかっている

  • S:ソーシャルとは、人々のソーシャル性・ネット空間の口コミなどを利用すること。人々がソーシャルメディアに書き込む口コミには、日本全国で年間1.5兆円もの消費を押し上げる効果がある

  • ソーシャルが成功するには、(1)消費者のネットワークを活用すること、(2)消費者の自発的な参加を促すこと、(3)ソーシャルメディアマーケティングの目的が明確であること、の3つが重要

  • P:価格差別(プライス・ディスクリミネーション)とは、ユーザーの熱心度によって支払う額が異なり、相対的に少ないヘビーユーザーに、より多く支払ってもらうことで高い収益を実現する仕組み

  • 多段階価格差別にすると、熱心なファンからライトユーザーまで、すべてのユーザーを取り込むことができる。多段階価格差別は、一物一価の5~10倍の収益をもたらすことが実証されている

  • D:データとは、FSPをどのように進めるかをデータを使って考えること

  • FSP-Dモデルが適用しやすいのは「限界費用がゼロに近い」「ユーザー同士の交流要素がある」「プラットフォーム的要素がある」「他社との差別化が可能である」「熱心なユーザーの出現が見込める」分野

<世界標準の顧客関係管理(CRM)>

  • CRMとは「お得意客を大事にすることだ」「顧客をファンにさせることだ」など、日本国内では多くの誤解がある

  • 世界標準のCRMとは「利益という観点で統一的に管理する」ツール。顧客の生涯価値(LTV)で統一的に管理し、各種の判断をしていく

  • 「顧客生涯価値=月当たり単価×利益率×予想契約期間-顧客獲得費用」。データが無い場合は、ありものの統計や市場調査のデータを使って算出する

  • 新規顧客の獲得では、ある初期投資をしたら、どれだけの長期的な利益を見込めるかという視点で顧客を捉える

  • 新規顧客獲得のコストは、既存顧客の維持コストの2~5倍高い。競合が増えると新規顧客獲得コストが増えるが、競合が増えても既存顧客維持コストは変わらない

  • リーダー企業の新規顧客獲得コストは、その製品・サービスが普及すると、大きく下がる。フォロワー企業ならば、早期であれば新規顧客獲得が重要であるが、成熟期だと既存顧客維持が重要である

  • 規模が大きい企業ほど離脱率が高く、結果としてLTVは中程度規模の企業よりかえって低い可能性がある。多くの研究で、企業規模とLTVは逆U字の形状になることが示されている

  • 本来、CRMの観点から言うと、上得意客に値引きなどの金銭的ベネフィットは愚策であり、「特別扱い」を感じさせる非金銭的ベネフィットが効果的。むしろ、伸びしろが高いライト・ミドル層に、割引やポイントプログラムを実施し、LTVを高めることに集中すべき

【終わりに 】

この本を読んで「多段階価格差別で多くのユーザーを取り込む、LTVの伸びしろをもとに判断する」ことの重要性に改めて認識させられました。

特に、多段階価格差別では、需要曲線をもとに収益の違いが表現されていましたが、ハッと気づかされました。

また、本書では出てこないですが、ユニットエコノミクスとの親和性が高い話が多く、デジタル化時代の標準的な考え方として抑えておくべきフレームだと思います。

今後の仕事において、以下を意識して実践しようと思います。

・「サイエンス」と「エンジニアリング」の両輪の知識・経験を重視する
・利益の公式など、要素を細かく分解していくことで、新たな気づき・ヒントが得られるやすくなる
・「顧客生涯価値=月当たり単価×利益率×予想契約期間-顧客獲得費用」を意識して、前の前の判断だけでなく、数年先を見越した判断をするように心がける

本記事では、上野雄史、星野崇宏、安田洋祐、山口真一氏の【そのビジネス課題、最新の経済学で「すでに解決」しています。】を取り上げました。

また、読書のための専用端末「Kindle Paperwhite」もご紹介。

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このnoteでは、若手ビジネスマンのスキルアップに関する情報を定期的に発信していきます。

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