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人生初の合コンの記憶

確か20代前半の頃だったと思う。

高校生の頃の友人(以下Yちゃん)の旦那さんの友だちが女の子を紹介して欲しいとのことで、私とYちゃんの共通の友人Aにお声がかかった。

大親友の彼女のツレとは程遠いが、まぁそんなところだろう。

友人夫婦もその場に同席するとのことで、実質2対2の合コンが開催されることになった。


20代前半の頃の私といえば常に男に飢えており、このチャンスを逃してなるものかと心の中でフンスフンスと鼻息を荒くしつつ表向きは平静を装うという非常に痛い仕上がりだった。

合コン当日は当然かの如くスカートを履いていったし、なんなら普段つけないような華奢なデザインのぶら下がり系ピアスも着けていった。完全体での出陣である。

場所は某大衆居酒屋にて現地集合。先に友人Aと待ち合わせをし、居酒屋へ向かった。

入り口付近で待つ友人夫妻+男性2人が目に入った。
私はあまり視力が良くないので顔の細部こそわからないが、とりあえずYちゃんだけは雰囲気で認識できた。

徐々にその距離は近付いていき、こちらに気付いたYちゃんが手を振ってくる。人妻ってなんかいいな。

「ハジメマシテ~~」みたいな適当な挨拶を交えつつ、ようやく男性2人組の姿を間近で拝見。




・・・・・・くさりかたびら・・・?????


説明しよう!くさりかたびらとは

これは実際に楽天で売られているベスト型のやつ

こういうやつのことである!


本来は鎧形式の防具の一種らしいのだが、この写真のものに酷似した服を着ていた男性がそこにいたのだ。


挨拶もそこそこに予約されている席に移動。

6人の列の最後尾を友人Aと一緒に進んでいるとAがぼそっと「服が…鎖…」と私に耳打ちしてきた。どうやら同じことを考えていたらしい。

Aとはそれ以上の言葉を交わすことなく席についた。

ちなみにもう1人の男性は極めて普通の男性。普通を極めるとこれになるのかというくらい普通の人。終始大人しくどちらかと言えば聞き手に回るタイプの良い人的な立ち位置。顔も服も覚えていないが結構明るめの茶髪だったことだけ唯一印象に残っている。


席についてからは料理の注文を先に済ませ簡単に自己紹介をしていざ合コンがスタート。

合コンと言うよりただの男女の飲み会(レクリエーション特になし)と言った方が近い気がする。
特に盛り上がる催しがあるわけでもなく、ただ淡々とお喋りしながら酒を飲みつまみを食う。

Yちゃんの旦那さんはさすが結婚しただけあってコミュニケーションの取り方が非常に上手だった。
というか、既婚者という前提が心に余裕を生みそれが言動に現れるからなのかもしれないが、なにを喋ってもナチュラル。私やAとも適度に喋りつつもちろん男性陣にも話を振りつつ飲み物が空になると「次何か頼む?」と気を配る。そりゃあ早々に既婚にもなるわいな。

対して鎖帷子(くさりかたびら)はと言うと、やたらともう一人の茶髪をいじり倒す。「お前って○○だよな~」みたいなそんな感じ。(よく覚えてない)いじられた茶髪は笑ってハハハと受け流していた。もちろん普通に会話もしたのでこの男性陣のどうでも良いやりとりを見ていただけではないが、大して盛り上がりもなかったのであまり覚えていない。

ひとつだけ印象に残った出来事があるのだが、私はこの出来事を通して完全に鎖帷子をシャットアウトすることになる。

特に山も谷もない会話が続く中、私は当時吸い始めたばかりのたばこを手に取った。女性の喫煙者に出会ったのが珍しかったらしい鎖帷子は「おっ、何吸ってるの?」とたばこの銘柄を私に聞いてきた。私はたばこの箱を出しながら「これですよ~」と、いかにも女性が吸います!なたばこを差し出した。鎖帷子は何を思ったのか「へぇ~ちょっと吸ってみたいちょうだい」と私に言ってきた。心の中では(エッ・・・)と思いつつまぁ1本くらいいいかと新しいたばこを取り出して差し出すと「あっいいよ新しいやつだと悪いから今のやつ一口ちょうだい」とのたまった。

どう考えても無理。間接アレじゃん。

名前を出すのも嫌なくらい嫌だった。初対面の鎖帷子をまとった男に吸いさしのたばこを渡す女がこの世にいるか?顔面の造形については触れていなかったがお世辞にもカッコイイとは言えない。それどころかイケメンの要素がなにひとつもないし、例えるならねずみ男みたいな顔だ。目がキュッとつり上がっていてなんとなく小汚い顔立ち。小汚いは言いすぎたかもしれないけどまぁ例えイケメンだったとしてもちょっと引く。生田斗真だったら渡す。

「いや、全然新しい方1本吸ってもらっていいんで差し上げますどうぞ」と言ってたばこ1本を犠牲にし間接アレを回避した。たぶん私の顔は嫌悪感にまみれていたと思う。にも関わらずその後はこともあろうに私の隣に座ってきやがりぶらさがりピアスを触ってきたり本当に地獄だった。

ここまで書くと鎖帷子は私にロックオンしたかと思いそうなものだが、しっかり友人Aにもボディタッチしていたので元からそういう奴なのだろう。適度なボディタッチは心の距離を近づける、とでも雑誌で読んだのだろうか。適度の範疇を超えているし何よりナチュラルさに欠けるので大失敗している。どんなに鎖帷子で武装していても下心が隠しきれていないどころか丸見えだ。

そして合コンのこれ以降の記憶はほとんどない。お酒を飲み過ぎてやらかしたとかそういう意味ではなく、連絡先を交換したとかその後の展開がどうとかそういう記憶が一切ないのだ。たぶん普通に過ごして普通に解散してそのまま終わったんだと思う。


この出来事の数年後、Yちゃんの結婚式に招待されたので行ってみるとそこには鎖帷子と茶髪がいた。
思わずAと「鎖帷子・・・!」と声を合わせた。
その頃の鎖帷子にはまだ彼女はいなかったらしく、式に参加していたYちゃんの友人たちの中でも群を抜いて顔面が可愛い子に声をかけていた。身の程知らず、ここに極まれり・・・。


そんなわけで私の人生初の合コンは盛り上がりもクソもない結果となったとさ。おしまい。

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