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17ねんぜみ A.K.A Brood X

それは今の家に引っ越して初めての春、ちょうど5月の今時分。朝スクールバスを待っていると、フロントヤードにある大きな木の幹に二匹のセミが殻の背中を割ってニョっと出てきているところだった。乳白色で目が赤くてアルビノみたい。初めての経験だったのでうれしくてSNSでシェアしたら、それは17年ゼミだよ、と友達が教えてくれた。

17ねんぜみ??WHAT?

そう、その年は17年の周期で地上に出てくるゼミの当たり年だったのだ!

興奮したのもつかの間でそれからというものあれよあれよと地面からちょっと小ぶりのセミがニョキニョキニョキ、それも数が半端ない。木の幹にはびっしりとセミが張り付き、根元にはキャラメルコーンのようなセミの抜け殻がどんどんどんどん、モリモリモリモリ山盛りになっていく。17年の間に何本か木が切られたのかもしれない、一本の木の幹のスペースに対してセミのボリュームが全然マッチしていなかった。だからあぶれたセミは芝生の上で羽化し始める始末。緑の芝が茶色に変る、こわい。

治安や景観の観点から春と夏の間は週に二回芝を刈らなければいけない。そんなときに限って家族は日本に出張で不在。私がやらねばならなくてどこまでもとほほな私。ブヲヲヲヲヲヲ〜ンとエンジンの大きな音とともにカリッカリッカリカリカリィィィィィっとクランチーなサウンドをさせてセミが高速回転するブレイドに吸い込まれてゆく。怖くて怖くて必要以上にグリップを強く握り締める。ごめんなさい、ごめんなさいと作業が終わるまで唱え続けた。リアル地獄。今、今この瞬間に数多もの命を奪う。あぁ、罪深い。いつも以上に疲れた、殺めてしまった蝉の怨念が私の両肩に重くのしかかる。(ような気がした)

セミの命は短い、命を全うできたほうのセミが(じゃない方、ごめんなさい!)命のバトンを次のジェネレーションに渡せた頃には不思議なもので、カリッと揚げたらちょっとおいしそうと思うほど親しみが持てていた。   最近、また周期ゼミのニュースが巷をざわつかせている、その名もbrood X。

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にょーーーーーーーーーーーん

17年ゼミは、いっせいに土から現われて補食されてもまだいっぱい残るから大丈夫!システムで種の保存を図るらしい、その数に私が殺めてしまった数も計算されていれば良いな、と祈るばかりです。食べてないけど。

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