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町で起こった、ちり紙怪事件 後編

前回までのあらすじ
商店街にある店前のクレープ自販機のお釣り受けにティッシュペーパーが入れられる事件。
Amazonで3500円で購入した韓国製のWEBカメラに映る男の姿を発見し、犯行時間を18:20頃と突き止める。
警察に相談するも、壊されていないから事件にならないと言われ、護身術を習いに行き、その犯行時間に張り込みをするも現れず、、、


ここまでが前回のあらすじ

警察もパトカーで出動し、スタッフ2人と私の4人体制で18:00-19:00まで張り込んだ。
しかし、その日は現れず。警戒されたかと思っていた。

その日は、会議があり張り込みの後、お店に残りオンライン会議をしていた。21時頃帰ろうと店を出て、自販機を見ると横にティッシュが落ちている。

会議の前、つまり張り込み中は、そのティッシュはなかった。WEBカメラを確認すると18:19に男の姿を発見。
あの軽快な、カチャ、スッ、サッのリズムでティッシュを入れられている。

しかし、18:00-19:00は4人体制で張り込みをしているのになぜ。

私たちの目は節穴だったのか!!!!

もしくは、ホグワーツから調達した透明マントで現れたか。

赤外線にだけ映り、生きている人には見えない幽霊か…

謎が多い。

次の日も張り込みをした。警察は来なかった、、、
チリ紙を入れられるなんて地味な事件にもならないことに付き合うほど警官も暇ではない。

自分で闘うしかないのだ、トレーナーに指南してもらった護身術に加えて、YouTubeで覚えた押さえ込みをバランスボールを相手に鍛錬を積み、私の防御力は向上している。

張り込み中は瞬き禁止のごとく見張ったがこの日も現れなかった。

しかし、またティッシュは入れられていた。

犯行時間はやはり18:20
犯行時間の誤差が毎日2分以内、なのに犯人が捕まえられない状態が5日間続いた。

私の防衛力はさらに向上し、YouTubeでは正当防衛になるギリギリの攻撃の仕方まで教えてくれるようになり、攻撃力まで上がっている。
このままでは、犯人が捕まる前に私が格闘家になってしまいそうだ。

自販機に張り紙を貼ろうともした、しかしこの犯行、謎が多い。なぜティッシュを詰めるのか、イタズラだとしても何も面白くもないし、嫌がらせでも地味すぎる。そして、毎日なぜ??

結局、この張り紙を貼ることはなく、自販機の隙間に見えないように忍ばせていた。

毎日も張り込みを続けることも出来ないし、やられっぱなしで悔しい日々が続いた。

しかし、ある日、私、名探偵ヤヨイはあることに気がついた。
18:20にしては、あたりが暗い気がする、、、、
アーケードがあり、夜でも明るい通りではあるが、その向こうに映る通りが18時にしては暗い。なぜだ???

そういえばと、思い当たることがあった、
WEBカメラを設定する時に時計の設定画面が表示された、その時最初に出てきた時間は、Koreaだった。それをJapanに選んで設定した。

もしかして、WEBカメラの設定がうまくいっていなかったのかもと思い、確認してみた。Japanになっている。

WEBカメラのLive映像は確かに日本時間になっている。
でも、そこで気づいてしまった。

私は、Live映像を見ておらず、いつも確認していたのは過去の映像でクラウドにアップされているものを確認していた。そう!おそらくクラウドサーバーはKoreaにあるのだ!!つまり、犯行時間は日本時間でクラウドにあるサーバーは韓国でここで1時間の時差があったのだ。

18:20に犯行が記録されていた これは韓国時間
と言うことは、実際は19:20に事件は起こっていた!!!

事件は、サーバー室で起きてるじゃない!現場で起きてんだ!!!!!

日々、護身術を習い、撃退トレーニングに勤しみ鍛錬を積んでいるが、私のSNS 上では、一人では危ない何を持っているかわからないからとみんな心配してくれる。

でも、私の本人に話を聞きたい好奇心は収まらなかった。

でも、流石に一人で撃退する勇気はなくて、近所で会社をしている仲良しの社長を呼び出した。事件といえばこの人。
以前、お店の前に車を止めていたら、鍵を閉め忘れた私の車に知らない酔っ払った女が助手席で爆睡していたと言う事件があった。その時も彼はいた。これもあり得ない事件だったけれど、今日は割愛する。

田村正和と西村まさ彦、片平なぎさと神田正輝というペアだ

片平なぎさと神田正輝は車に乗り込み時を待った。
牛乳とあんぱんを持ってくるのを忘れた。

そして、その時は来た。
あの防犯カメラに映っていたおじさんがいつもの衣装で現れた。
神田正輝は遠回りして、回り込む。猫のようなフットワークだ。

片平なぎさは、小走りで近づく

おじさんが自販機に手をかけたその時、神田正輝が声を掛ける

おじさん、何してんの?

何もしてない、、、  
おじさんは、慌ててマスクをして答える。

毎日、ティッシュ入れてるのあなたでしょ。
神田正輝が迫る

入れてない、

そこで片平なぎさ登場!

入れてるのは知ってるんだ、証拠はある!!!

ジャーン!!!裁判所で勝訴の紙を持って走る人のごとく両手でWANTEDの張り紙をおじさんに見せた。

全部、このカメラで撮ってんのいつも同じ時間に入れてるの見てた。
なんでこんなことするの??
片平なぎさは言う。

(当然だが片平なぎさではない。一般人の私だ、ついでに神田正輝もいない。一般人のただの人だ。)

ゴミ箱かと思った、、、、

はぁ????
ゴミ箱にしてはえらく小さくて、しかも入れにくい。

何を言っとりゃーす!そんなわけありゃーすか!!!
名古屋出身の彼は、怒ってるのか興奮してるのか名古屋弁で捲し立てる。

警察に連れて行こうとするが、
おじさんが「それだけはご勘弁を!!!もうやりませんから」と言う

コテコテの刑事ドラマを見ているようだ。

とりあえず、写真撮るからとおじさんに言うと
はい!と抵抗することなく背筋を伸ばして少しはにかんだ顔をした。
こんな状態でも人はカメラを向けられると顔を作ろうとするのだな。

警察は、物を壊してないから罪にならないと言うし、連れて行ってもどうにもならないと察し。もうやらないと約束してくれるならいいよ。とあっさり釈放した。

名前も身分証明書を取るとか誓約書を書かせるとか、一切そんなことを考えなかった。
でも、私のスマホには、名前も知らないチリ紙おじさんのハニカミ顔の写真が残っている。

チリ紙ハニカミって韻を踏んでる場合じゃない
もう、来るんじゃないよ。

それからは、事件は起こっていない。
19:20になってもおじさんは現れない。
結局、何が目的だったかはわからないけれど、私に恨みがあったとか、誰かの差金だったとかそういうことでもないらしい。
何か、むしゃくしゃすることがあったのかもしれないし、寂しさや捻れのようなものがあったのかもしれない。
社会の歪みのようなものを感じた。

変な事件ではあったけど、平和が訪れた。
そして、解決した週末はお祭りでクレープ自販機3号機くんは元気いっぱいに働いて、過去最高売り上げを記録した。

私の護身術は役に立たなかったけれど、備えあれば憂なし。
二の腕はますます太く立派になった。



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