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ネットゼロとカーボンニュートラリティ(2)

ISO化された「Carbon neutrality」、社内で推進していくためにはまずは基本を抑えておきましょうと、用語の説明を行っています。

前回は、GHGと温室効果ガスの違い、ネットゼロとカーボンニュートラリティの本質について説明しました。

今回は、ネットゼロのムーブメントの発端となった、UNの「Race To Zero Campaign」の定義を参照しつつ、ネットゼロとカーボンニュートラリティの違いを確認していきたいと思います。

「用語集(Lexicon)」を参照しましょう。

そこには、関連する次の4種類の説明があります。

Race to Zero Lexicon より

ゼロなのは、ネットか絶対量か。
ニュートラリティは、GHGかCO2だけか。

前者において、「Race To Zero considers individual actors to have reached a state of net zero」とあるので、人為的な排出が人為的な除去によってバランスする「Net zero」を目指していることがわかります。

「Absolute zero」は人為的な排出が無い状態なので現実的でないですよね。

後者については、GHG neutralityとCarbon neutralityのいずれの定義を見ても、何が「Neutral」かは明確にされていません。両方の「Neutral」があることが分かるだけです。

ここで「Net zero」の定義にある「any remaining GHG emissions」に着目しましょう。この表現によって、ニュートラリティは、GHGsであることが明らかになるんですねぇ。

さて、コメント欄に注目。

Net zero
Valid end-state target for Race to Zero

Neutrality
Not the same as net zero because it does not require “like for like ” balancing

ニュートラリティでは、人為的な排出を「like for like(永久的な化石燃料由来の炭素除去)」によりバランスさせることを求めていないので、ネットゼロとは同じではない「Not the same」と釘を刺しています。

ですので、定義欄にあるように「削減系・除去系、いずれのクレジットを用いて埋め合わせてもよい」となっているのですね。

他方、ネットゼロは、最終状態、最終段階で有効であるとしています。
その心は、「1.5℃目標経路」に沿って排出削減活動を行い、どうしても削減できない排出量だけが残った段階で「like for like」な吸収除去量で中和すべきであり、それをもってネットゼロと見なすということなのでしょう。

これに対し、「1.5度目標経路」に沿って排出削減を行っている段階で、「like for like」でないクレジットで埋め合わせることを、ニュートライティと定義し、ネットゼロの最終目標では無いものの、中間ステップとして認めるとしています。

事業者による、カーボンニュートラリティ達成のために、カーボン・クレジットを購入する行為は、自社のバリュエーション外の事業者による削減活動を支援し、ひいては、地球全体の排出削減に寄与する行為「BVCM」としてSBTiやCDPも推奨しています。

カーボンニュートラリティの定義の明確化は、BVCMの浸透、つまりカーボン・クレジットの活用の活性化に寄与するでしょう。

個人的には、活用する事業者、クレジット収益が入るプロジェクト実施者、いずれにとってもプラスとなるような、支援を行いたいところ。目下は、繰り返しご案内している、Jブルークレジットを推進していく計画です。

ということで、分かっていそうで分かっていない、ネットゼロとカーボンニュートラリティについてご案内してきました。

これで、言葉についてはある程度理解頂けたかと思いますので、次回は、おさらいという意味で、1.5度目標経路に沿って削減を進めるということはどういうことか、ISO14068−1の内容を拝借して説明したいと思います。

もう少しお付き合いください。



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