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金融SBTの進化が止まらない

セクター別アプローチを鋭意開発中の、SBTi。
パイプラインに沿って開発が進み、ほぼon scheduleのようです。

昨年22年から今年23年にかけても、正式リリースが続き、noteでも採り挙げてきたところです。

セメントセクターは、クリンカー製造という、最もCO2を排出する過程をバウンダリーから除くことが禁止されました。内製から外注にするだけで削減できるのであれば、いわゆる「リーケージ」バリューチェーン全体の排出量の削減にはつながりません。

海運セクターは、運航する船舶の種類とサイズ、オペレーターの種別によって、目標設定が異なっていました。クロスセクターアプローチは使いづらい点をケアするのが、SDAの存在価値です。

「Well-to-Wake(油田から航海まで)」という用語(概念)も登場しましたが、覚えていますか?

さて、昨年のSDAの一番の目玉は、何と言っても「FLAG」でしょう。
こちらは、5回シリーズでお届けしています。

加えて、正式リリースから6ヵ月の猶予期間を経た後、適用が義務づけられますので、今年23年4月を前にして、フォローアップも行いました。

ドラフトの公開もありましたね。

鉄鋼セクターは石油・ガスセクター、発電セクターと並び称される、多排出セクターですが、ドラフトでは「Scrap-input-dependent pathways」を設定することになっています。

感度分析により、スクラップの使用量によって、30年時点で達成すべき平均的な原単位削減割合が、△29%〜△11%で変化することが分かったからだそうで、バージン材からの移行を求める内容。

つまり、高炉から電炉への転換を求める内容でした。

最近では、先月、建築物セクターのドラフトが公開されています。

2ヵ月のコンサルテーションを経た後ファイナライズ、今年23年の年末までに正式リリースの予定のようです。

こちらについても、後日フォローしていきたいと思っています。

このように、パイプライン上のSDAが新規にリリースされている中、FI Near-Term Framework(NT)の更新、及びFI Net-Zero Standard(FINZ)の新規導入が発表されました。

これらの資料のドラフトは、2023年第2四半期にSBTiによって公開され、パブリックコンサルテーションが行われる予定だとか。

また、ウェビナー、詳細な解説ブログ、主要な金融機関によるロードテスト、ワークショップ、公開調査など、関係者による検討プロセスがよていされているとのことで、他のSDAと比較して力の入れようが分かりますね。

個人的には、金融機関向けの新しい化石燃料基準が含まれる点に着目。

金融セクターには、石油・ガスセクターの脱炭素ビジネスへの「公正な移行」を支援することが求められていながら、当該セクターのSDA開発は最も遅れており、現在認証申請もできない状態。

責任を果たそうとしても、そうすると、自社の「Financed Emission」が増えてしまうと言うジレンマ。ステークホルダーの評価も厳しくなってしまう。

この状態に、何らかのソリューションが提供されるのか、期待したいです。

また、NTは短期の目標ですので、次第にフェーズアウトし、FINZに統合されることが明示されています。短期、中期、長期のタイムスパンを考慮した目標設定が求められるでしょう。

なお、現在のところ今年後半に正式リリースとなりますが、従来通り6ヶ月間は猶予されます。しかしながら、これはあくまでも特例であって、利用したい場合は、リリース前にSBTiに通知する必要があるそうですので、ご注意下さい。

今年は、Q2末にIFRS S1及びS2のリリースがあるのに加え、Q3末にはGHGプロトコルのLand Sector and Removals Guidanceの発表が控えています。
発表を受けて、SBTiのFLAGも修正が入るかもしれません。

年末のCOP28に向けて、気候変動界隈は、忙しくなっていきそうです。
全力でフォローしていきますので、ご期待下さい。



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