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CBAMの次はIRA

炭素国境調整

製造時に排出する排出量に対し、適切な規制をしていない国・地域からの輸入に対して課税を行い、内外の炭素価格の「調整」を行う措置のことで、当該地域からの「リーケージ」を防ぐ目的で行われる施策です。

欧州の「CBAM(Carbon Border Adjustment Mechanism)」が代表例で(というか、言い出しっぺ)で、すでに、23年10月から報告義務、26年から「CBAM証書」を購入しなければならなくなります。

こちらについては、繰り返しご案内してきました。

ただ、一方的にそんなことをやられたら、たまりません。
当然の如く、米国もやり返しています。
具体的な動きは見えていませんが、こちらもご案内したことがあります。

「炭素国境調整」という名の保護貿易に見えなくもないですが、相手が出るなら仕方ない、と言えなくもないですね。

だからと言う訳ではないでしょうが、今度は、米国が先に刀を振り上げた形になったのが「IRA(Inflation Reduction Act インフレーション抑制法)」。

金融に明るくないので、詳しくはご自身でお調べ頂きたいのですが、私の理解は、CBAMが「出ていくな」だったのに対し、IRAは「入っておいで」

CBAMは、EU-ETSを免れようとEU域外へ生産拠点を移した場合、そこで生産された製品をEU域内へ輸入する際に課税するような制度。なので、「出ていってもいいけど、覚悟しとけよ」と言われているようなもの。

他方、IRAは、一定条件下で米国内で生産された対象製品に対しては補助金または減税措置を行う制度。なので、「出て行かない方がよいよ、さらには、入ってきた方が得だよ」と言われているようなもの。

傍目には、CBAM対応より、IRA対応を急いでいる企業が多いように見えますが、どうでしょうか。IRA対策をEUが打ち出したのも、EU域内の企業が働きかけた側面もあるでしょうね。CBAMをEUが公表したときと同じ構図かと。

さて、そのIRA。条件により、様々な企業に影響が出るという分析が多いですが、個人的には、日本企業にとってプラスの影響があるかもしれないと思っています。

例えば、IRAはクリーン水素の生産に最大で$3/kgの税額控除があるそうですが、輸出向けを明確に除外していないそうです。であれば、控除分を考慮した価格設定にして日本に輸出すれば、その分安く調達できます。

蓄電池や太陽光パネルの部品生産の税額乗除は輸出向けにも適用されるとのこと。その他の製品でも、明示的に輸出を除外していなければ、米国製品の輸出が拡大することが予想されます。であれば、仕方なく中国製を選択せざるを得なかった業種にとっては、朗報でしょう。

このようにIRAは、負の側面だけでないと思うところ、やはり日本企業は、詳しく分析し、自社の脱炭素戦略に役立てていきたいですね。

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