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開示プラットフォーム~CDP以外の選択肢?

回し者ではありませんが、これまで何度となく、適切な情報開示を行うためには「CDPを利用しましょう」とご案内してきました。

これからも、当面はこのスタンスは変わらないとは思いますが、ESG全体に関わる情報開示においては、様々なコンペティターがいるのも事実。

つい先日SNSで教えてもらったのですが、こちらは、課金しなくても、非常に利用価値があるのではと思いました。

「ESG報告の世界は複雑であり、何が、どこで、どのようにサスティナビリティ情報を開示すべきかを理解し、最新の動向を把握することは、困難で時間のかかる業務である」という問題意識の元、「進化し続けるESG報告の複雑な状況を理解し、ナビゲートするツール」を開発したとあります。

CDPと異なるのは、CDPは機関投資家の要請を受けて企業に質問状を送付、回答を精査してランク付け、内容を開示するのに対し、ESG Bookは、企業自らのレポートや国・地域の報告書、各種規制、インデックス、NGO/NPOのレポート等をAIにより分析、開示しているという点です。

なので、手間暇をかけているCDPが有料で、ESG Bookが無料なのは当然。
気候変動に関しては、やはりCDPに及ばないですね。

とはいえ、EUのCSDDDに見られるように、サプライチェーン全体にわたって持続可能性のリスクと影響を適切に特定、防止、緩和、報告することを求められる時代にあって、取引先のリスクを予め把握できることは、重要ではないでしょうか。

さて、このプラットフォームは、機関投資家が投資判断に用いる材料を提供することが目的の一つですので、個社レベルで参照できることはもちろんですが、テーマ毎・目的毎に企業をグルーピングしたポートフォリオを作成することもできます。

試しに、CDPの3つの質問書全てでAリスト入りしている企業10社で、ポートフォリオを組んでみました。

概略はこんな感じで表示されます。
スコアはESG Bookオリジナルである点に留意しましょう。
(「i」をポイントするとスコアの説明がポップアップします)

10社からなる独自のポートフォリオのスコアを、ESG Bookにデータある企業全体と比較することが可能。なので、ファンドであれば、構成銘柄のESGパフォーマンスを評価することができるんですね。

ポートフォリオ名の下のタブで、詳細へジャンプします。
無料だと、まぁ、この程度ですね。

GCスコアは、国連グローバルコンパクトの枠組みに沿った企業行動の基本原則に違反するリスクのある企業を特定するものだそうです。

「腐敗防止」「環境」「人権」「労働」という4つのピラー毎、及びクライテリア毎のスコアが、こちらは全て開示されています。

温度スコアは、短期(Near)及び長期(Far)で、現状何度の経路上にあるかを表したもの。これを見ると、CDP Aリスト企業は、短期は1.5度目標経路に沿っているものの、長期だとまだ怪しいといった感じでしょうか。

続いて、個社を見ていきましょう。
ポートフォリオから、花王を選んでみました。

概略では、ESGパフォーマンススコアとGHGのスコープ別排出量パイチャート、スコープ3のカテゴリー毎の数値データが示されます。

「Climate Analytics」のページに飛んでも、無料だと、カテゴリー毎のデータは見れません。ヒストリカルデータも同じ。なので、気候変動については、CDPに頼った方がよいですね。

回答企業が開示を許諾していれば、無料でも参照できますから。

なお、温度スコアで短期は、WB2目標を選択していながら、現状、その経路には沿っていませんよ、というアラートが出ています。

ポートフォリオ全体と同じく、ESGパフォーマンススコアは、ほとんど参照不可。
これがESG Bookのウリなのでしょう。

カテゴリーは26あり、スコアとパーセンタイルも示されるので、刺さる人には刺さるデータかと。

Peerベンチマークに至っては、無料では全くわかりません。

GCスコアは、無料で全開示。
ESGパフォーマンススコアが参照できなくても、このデータで十分という場合もあるかもしれませんね。2013年からのヒストリカルデータもありますし。

ということで、無償である程度利用できる開示プラットフォーム「ESG Book」をご案内しましたが、いかがだったでしょうか。

このプラットフォーム、もちろん、参照するだけでなく、自社の開示を行うことができます。なので、サスティナビリティレポートで概略を説明しつつ、詳細は、こちらのサイトへナビゲートするような使い方も、良いかもしれません。

いずれにせよ、「開示」が目的、最終地点ではありません。
誰でもできる、継続可能なワークフローを構築したいですね。

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