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日本版S1・S2 公開草案 滑り込み公開

2023年度末までに公表するとしていた「公開草案」

年度末の最終稼働日である3月29日、滑り込みで公開されましたね。

サステナビリティ関連情報を発信するメディアを謳う「NIKKEI GX」さんは、遅れてはなるものかと、4月1日5:00に解説記事をリリース。まぁ、一大スクープでしょうから、休日返上だったことでしょう。

個人的には、議事及び事務局提出資料を都度確認していたので、委員会における審議過程は把握していましたし、先月のセミナーも参加しましたので、驚きはなく、想定通りの内容でした。

金融審議会の「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」で議論される次の事項以外は、このドラフトを軸に確定基準が策定されることになります。

1.適用対象企業及び適用時期
2.任意適用促進施策
3.適用義務化スケジュール
4.プライム上場企業以外への適用拡大方法
5.有価証券報告書における、サスティナビリティ情報開示の環境整備

ですので、基本的には、これをベースに開示準備を進めていくべきですが、SSBJは7月31日までコメントを募集していますので、積極的にフィードバックすることもお奨めします。

「審議の過程で意見が分かれた項目」について10ヶの質問項目が提示されていますが、公開草案全体についても、意見することができます。

加えて、つぎの記述からも、柔軟に対応する姿勢が伺えますので、市井の声を、是非届けましょう。

さて、先月のセミナーで、意見を頂きたいとして紹介されたのは、「審議の過程で意見が分かれた主な項目」でした。このとき川西委員長から、その他の項目は、公開草案の中に「採用されなかった案」として記載するので、参照してほしいと説明がありました。

ですので、早速チェックしてみました。

公表された公開草案3文書に記載されていた「採用されなかった案」は、それぞれ次の通りです。

サステナビリティ開示テーマ別基準公開草案第1号「一般開示基準(案)
1.適用時期

サステナビリティ開示テーマ別基準公開草案第2号「気候関連開示基準(案)」
1.戦略 (a)気候関連のリスク及び機会(ガイダンスの情報源)
2.絶対総量の合計値の開示
3.温対法に基づく温室効果ガス排出量の報告
4.スコープ2温室効果ガス排出の測定方法
5.スコープ3温室効果ガス排出の絶対総量の開示における重要性の判断の適用
6.気候関連の移行リスク、物理的リスク及び機会に関する開示
7.内部炭素価格に関する開示
8.適用時期

サステナビリティ開示ユニバーサル基準公開草案「サステナビリティ開示基準の適用(案)」
1.「SASB スタンダード」及び「産業別ガイダンス」の取扱い
2.企業が活動する法域の法令の要請により報告される指標の報告のための算定期間がサ ステナビリティ関連財務開示(及び関連する財務諸表)の報告期間と異なる場合
3.適用時期

これを見ると、論点はセミナーで紹介された9つの項目に集約されているように思えます。内容を確認したところ、細かい点で異なる点はあるものの、概ね当日「代替案」として説明されたものでほとんどカバーしています。

「主な」と言いながら、全ての論点の概要を説明していた訳です。

セミナーでは「ご意見を頂きたい主な項目」に3時間もの時間を費やしたのも、審議の過程を詳らかにし、利用者・作成者・有識者の率直な意見を伺おうという委員会の姿勢の表れだったのでしょう。

是非、皆さんも、公開草案を最後まで読み通して下さい。

公開草案に採用された案が何故「採用された」のか。他方、「採用された案」のどのような点が問題視され「採用されなかった案」が提案されたのか。

このように、多面的な意見が交わされたことを了承していれば、「お上が決めたことだから」と渋々従うのではなく、「なるほど、確かにそうだよね」と納得して、開示準備に取りかかれるのではないでしょうか。

SSBJにおける確定基準決定へ向けた審議状況、及び金融庁のワーキング・グループ動向については、タイムリーにご案内していきたいと思っています。

ご期待下さい。

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