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一歩先の削減ソリューションに寄与しよう

先日、サプライチェーンが「気候クラブ」になるといいですよね、という御提案をしました。今回は「クラブ活動」として、脱炭素化に貢献する革新的な技術を採用した製品を、率先して積極的に導入することも加えてお奨めしたいです。

「購買行動」を通じて地球全体の排出量削減に資することが可能なのです。

それを具体的に実施しているイニシアチブがあります。
noteでも既にご案内済みですが、「First Movers Coalition(FMC)」です

ビル&メリンダ・ゲイツ財団、世界経済フォーラム、米国政府のジョン・ケリー気候問題担当特使が共同で主催する、脱炭素技術の普及を推進するイニシアチブで、2021年11月にCOP26に合わせて発足しました。

主な目的は、企業が自らの購入力を活用して、市場でまだ普及していない、あるいは初期段階にあるクリーンエネルギー技術や炭素削減ソリューションの採用を促進すること。これにより、これらの新技術が市場で競争力を持つためのスケールアップとコスト削減が可能になるというものです。

現在は、7つのセクターにフォーカスしており、参加企業は、どのセクターの製品を購入するかをコミットします。詳しくはサイトをご覧頂きたいのですが、皆さんもよくご存知の、錚々たる企業がメンバーとなっています。

航空
アルミニウム
シッピング
二酸化炭素除去
コンクリート
鉄鋼
トラック輸送

まぁ、このようなイニシアチブに参加するのはハードルが高いのですが、サプライチェーンで「普及していないが故に導入コストが高い、新しい技術を採用した製品を導入する」という方針を立ててみてはいかがでしょうか、と思うのです。

短期SBTでは、スコープ3の目標として「エンゲージメント」が認められていますが、その具体的取組の一つとするのもよいでしょうね。

ただ、とはいえ、導入コストの課題は避けて通れません。
使用量削減や排出量削減によるコスト低減ではペイしないでしょう。
加えて、新技術であるが故のトラブル、不具合も想定内。
操業に支障が出るような事態になれば、脱炭素という意義なんて吹っ飛びます。

なので、ここはやはり、政府の出番ではないかと。
いえ、補助金を出せというのではありません。
輸出保険のような仕組みでよいと思います。

これであれば、輸出する側(製品供給側)も輸入する側(製品購入側)も、いずれもその恩恵を受けることができますし。

次に、個社レベルのサプライチェーンではなく、コーポレート・ニッポンの「クラブ活動」としてお願いしたいことがあります。

それは、Breakthrough Energyのような取り組みです。

ビル・ゲイツが設立した、気候変動への対策としてクリーンエネルギー技術の革新を促進することを目的としたイニシアティブです。

活動の中心となるのは、以下の2つの資金提供プログラム。

Breakthrough Energy Ventures (BEV):
革新的なクリーンエネルギー技術のスタートアップに投資するベンチャーキャピタルファンド。将来のエネルギー市場に革命をもたらす可能性のある初期段階の企業に投資し、それらが成長し、市場に参入するのを支援。主に長期的な視点での投資にあり、気候変動に対する具体的な解決策を提供する技術に重点を置く。

Breakthrough Energy Catalyst (BEC): 
すでに存在する、あるいは開発段階にあるクリーンエネルギー技術を商業化するために資金を提供するプログラム。新しい技術が実用化され、広く普及するのを加速することを目的とする。特に、グリーン水素、直接空気捕獲、長期エネルギーストレージ、および持続可能な航空燃料などの分野に焦点を当てている。

要するに、BEVは新しいクリーンエネルギー技術の初期段階の革新に投資するのに対し、BECはこれらの技術の商業化と広範な採用を促進することに重点を置くという違いがあります。

これと同じような役割を、官ではなく、民でやってほしいのです。コロナ禍の持続化給付金やアベノマスク頒布の例を挙げるまでもなく、官が実施するときの政策コストには辟易してしまいます。

確かに、コーポレート・アメリカは批判の対象となりましたが、経済成長や雇用創出に大きく貢献したことも事実。なので、大企業だけが前面に出るのではなく、個社が脱炭素化の目的の下に「コーポレート」を形成し、新しい産業を生み出す「クラブ活動」を実践してほしい、という願いです。

こんなことを考えていたところ、COP28が開催されているドバイで、欧州委員会のマロシュ・シュチョビッチ副委員長、ブレイクスルー・エネルギー創設者のビル・ゲイツ氏、欧州投資銀行のヴェルナー・ホイヤー総裁が、EU–Catalyst partnershipの支援を受ける最初の欧州プロジェクト2件を発表しました。

1件目は、デンマークのエネルギー会社、Ørsted社のFlagshipONEというプロジェクト。回収した生物起源のCO2と再エネ由来の水素からe-Methanolを生産、海運セクターへ提供するものだそうです。

2件目は、Energy Dome社(伊)のCO2バッテリー。10時間以上の蓄電が可能で、リチウムイオンバッテリーよりも競争力があるとか。世界初の本格的なCO2電池エネルギー貯蔵実証施設を建設予定とのこと。

知りませんでしたが、EU–Catalyst partnershipは、2021年にグラスゴーで開催されたCOP26において、ウルスラ・フォン・デア・ライエン大統領、ヴェルナー・ホイヤー大統領、ビル・ゲイツ氏によって発足していたそうです。

EUと欧州投資銀行とBreakthrough Energyなので、官民ではありますが、Breakthrough Energyが推進する、上述した2つのプログラムの手法が牽引していくかと考えると、期待せざるを得ません。

スタートアップが直面する死の谷にはBEVが有用ですし、上市した後のスケールアップにはBECが貢献します。2つの局面で、2段階ロケット支援が得られる訳です。

今回は2件ですが、何が続くか楽しみです。

ということで、つらづらと「クラブ活動」を妄想してしまいましたが、とにかく、自社の小さな削減でバタフライ効果を起こし、2050年ゼロカーボンを達成したいものですね。

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