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統合化の端緒となった2023年(2)

前回は、情報開示の「内容」について見てきました。
今回は、「方法」について振り返りたいと思います。

情報開示「方法」については、何をさておいても、開示プラットフォームのデファクトスタンダードを標榜するCDPでしょう。

回答は、サス担としては絶対外せない、毎年の恒例行事。
2022年からは、プライム上場企業全社が対象となりが話題となりました。
皆さん同様私にとっても一大関心事なので、繰り返しご案内しています。

そんなCDP、2024年にはドラスティックな変更があります。

CDPは、質問書の複雑さを軽減し、開示にかかる時間を短縮できるよう、質問書を再構築。これまでの、気候変動、フォレスト、水セキュリティで重複している内容を減らし、一つの質問書に統合すると発表しました。

質問書は、ISSBが作成したIFRS S2号「気候関連開示」と整合させ、各国で進む情報開示の義務化に先んじて対応することをサポートし、各国の規制で求められる以上のメリットを提供。また、TNFDフレームワーク、欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)とも整合させていくとのこと。

・2024質問書の回答提出期間は、2024年6月初旬から9月
・新しいプラットフォームへのアクセスは2024年4月から可能
・2024質問書の回答に対するスコアは2024年末までに発表予定

歴史の長い気候変動は約18,700社が回答しているのに対して、後発の水セキュリティ及びフォレストは、圧倒的に数が少ないので、情報開示のデファクトプラットフォームとなるためには、統合はマストだったのでしょう。

ISSBは、S2の気候変動だけでなく、生物多様性や人権、人的資本についての開示要求事項の策定を予定しています。それに併せて、SSBJが日本版を策定、開示を義務化していくと考えられます。CDPは、歩調を合わせて、質問書をアップデートしていくでしょう。

すると、何をさておいても、気候変動関連情報、なかんずく、GHG排出量については算定できていないと始まりません。

省エネ法・温対法の対象であれば少なくとも直接・間接排出量は把握していたかもしれませんが、算定ルールのデファクトであるGHGプロトコルでは、一定基準の下、スコープ3排出量も算定対象に含むことを要求しています。

省エネ法・温対法の対象でない事業者は手つかずだったかもしれません。算定なんて、大企業だけが行うものと認識していたかもしれません。

ですが、上記のような事情を背景に、取引先からGHG排出量報告要求が始まっています。グローバル企業のバリューチェーンに組み込まれているのですから、算定と無縁ではいられないのです。

スコープ3排出量の算定は、どのカテゴリーからの排出量が多いのかを把握し、優先順位をつけて削減活動を実施、バリューチェーン全体での削減に繋げるのが第一の目的です。

ですので、取引先は、自社の削減活動を推進するのはもちろんのこと、スコープ3の様々なカテゴリーにおける排出量の削減にも着手します。その中で着手しやすいカテゴリーとして、カテゴリー1「購入した商品・サービス」が挙げられます。

同じ原料が複数の取引先から購入できるのであれば、排出量の少ない取引先を選択すれば、努力することなく自社の排出量を削減できます。

つまり、GHG排出量が商品の一つのスペックになると言ってよいでしょう。
製品仕様として、購買契約に盛り込まれるかもしれません。(電力購買では既に行われています)

だとすると、取引先が実施しているのと同様、自社も、算定を行い、排出量を把握して優先順付け、削減活動に着手しなければなりません。開発競争と同じですね。

もはや、算定スキルは、企業経営のコアコンピタンス。
ですが、ご安心下さい。

メディアなどで、さも、どの企業もしっかり算定しているように吹聴していますが、そんなことはありません。皆さん、ほとんど同じ状況です。

とことん応援していきます。
一緒に、頑張っていきましょう。

ということで、情報開示の「方法」についてお届けしてきました。
次回は、「算定の対象及び方法」について振り返りたいと思います。

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