見出し画像

ブラジルのVCMが熱い?!

昨年、「アジアのカーボン・マーケットが熱い」というお話をしました。
既に稼働している中国や韓国はもとより、台湾やインドネシア、ベトナムで取引市場設立が予定され、インドでも模索しているというものでした。

また、気候変動だけでなく、サスティナビリティ情報開示のインフラを共通化し、統一したESG指標を導入するといった動きも出ていました。

個人的にも、台湾でブルーを創生しようと青図を描いていたところなのですが、地球の反対側、ブラジルでも「カーボン・マーケットが熱い」というお話をお届けします。

情報源は、いつもお世話になっているACXのメルマガなのです。ちなみに、ACXは世界的に質の高いカーボン・クレジットへのアクセスを促進する重要なプレーヤーとして、今後存在感を示すことになるかもしれないと、以前のnoteでお伝えしていたところです。

ACXのメルマガは、マーケット動向に加え、ボラクレ&コンクレのアップデートも届けてくれるので、重宝しています。まぁ、Carbon Pulseのように、サブスクしていないとアクセスできない情報もあるのが、難点ですが。

そのACXはAllied Offsetsと提携し、VCMの動向、プライス動向、プロジェクトの現状等についての最新情報を提供しています。

なお、Allied Offsetsは、三大ボラクレを始めとする世界のクレジットを集約し、研究者、個人、ビジネス向けに様々なレジストリのプロジェクト情報を提供する「プレミアムダッシュボード」を運営しています。辞書で言うところの「横串検索」ができるんですね。

元意、この2社が、ブラジルに焦点を当て、同国のカーボン・オフセット・プロジェクト、トップバイヤー、同地域における全体的な発行・消却の包括的な概要を紹介していました。

面積及び人口からして当然ではありますが、ブラジルのボランタリーカーボンマーケット(VCM)は、2021年以降、年間の退役が大幅に増加し、大幅な成長を遂げているとのこと。

237の活発なカーボン・オフセット・プロジェクトがあり、さらに188の保留中のプロジェクトがパイプラインにあるので、これから続々市場に出てくるのでしょう。677のInactiveが気になるところではありますが。(ウォッシュ批判の対象なのかもしれません)

ステータス別プロジェクト数(AlliedOffsets より)

大半のプロジェクトが再生可能エネルギーセクターなのは、当然。廃棄物、森林及び土地利用変化、エネルギー効率化。燃料転換と続きます。バイオ炭はこれから伸びてくるのでしょうか。

方法論別プロジェクト数(AlliedOffsets より)

スキーム別で見ると、約7割がCDM。このうちどの程度が、パリ協定下にて使用できるクレジット(6.4ERs)となるかは記載がありませんでした。なので、この数字を全部信用することはできません。

というのも、移行できるCERは、2013年1月1日以降に登録されたプロジェクト活動等から発行されたものに限定されましたので。

その後は、ボラクレNo.1のVCSが続いています。

クレジットスキーム別プロジェクト数(AlliedOffsets より)

さて、2021年はブラジルのVCMにとって重要な節目となり、過去10年間で最も多く償却されたとのこと。確かに、急激に伸びています。

年毎の償却数(AlliedOffsets より)

参加企業は、0xソサエティ、1st Waste Management Consultants、2Bサイエンティフィック、2Wエコバンクなどの有力企業と説明されていました。(SUEZ以外全く知りませんでした)

プロジェクトオーナー別の発行数及び償却数がこちら。

デベロッパー別発行・償却数(AlliedOffsets より)

ACXは、「ブラジルのVCMは、気候変動と持続可能性に対する世界的な認識と、地元政府からの大きな支援に後押しされ、企業、投資家、環境保護団体など、さまざまな層から炭素クレジット取引への関心が急速に高まっている。」と分析しています。

レポートを見ると、この成長は、植林と再生可能エネルギーにまたがる様々なプロジェクトに反映されていることが分かりますが、何度も申し上げているように、dMRVを取り入れるなど、ウォッシュ批判に晒されないような、システムの開発と歩調を合わせてほしいですね。

さて、2023年10月4日に上院環境委員会がブラジル温室効果ガス排出量取引制度(SBCE)を設立する法案No.412/2022を承認したことにより、このセクターにおけるクレジット創出がさらに進化する道筋ができたと思います。

この制度は、セクター別の規制から脱却し、年間CO2排出量が1万トンを超える事業体に対して排出量報告を義務付けており、気候変動に関する閣僚間委員会と常設技術諮問委員会によって管理されるSBCEが、NDC達成のための「国家割当計画」を策定しています。

とはいえ、アメリカは言うに及ばず、各国とも、リーダーが変われば政策は変わるもの。

現在のルーラ大統領は、2030年までにアマゾンの違法な伐採を終わらせることを目標とする計画を発表するなど、環境保全において非常に積極的な姿勢を取っていることは、安心材料です。また、COP27で「ブラジルは戻ってきた」と宣言したことも記憶に新しいですよね。

ですが、2年後には、次期大統領選が行われます。まだ先の話ですが、気候変動というテーマにおいては、あっという間です。

ブラジルが、「熱いVCM」を強力に推進し、誰からも文句を言われないような、経済と環境の「デカップリング」を達成することを期待したいです。

もしよろしければ、是非ともサポートをお願いします! 頂いたサポートは、継続的に皆さんに情報をお届けする活動費に使わせて頂きます。