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クレジットと証書の違いを押さえておこう(1)

現段階では、コンプライアンスであれ、ボランタリーであれ、カーボン・クレジットを購入して、組織の排出量を「オフセット」し、その「調整後」の排出量を報告することは、GHGプロトコルではNGです。

一応、サス担の方々におかれては、この認識はある程度浸透してきたのでは無いかと、希望的観測をしております。

が、次に出てくる疑問が「クレジットと証書の違い」ではないでしょうか?
というのも、混同しているが故の質問をよくお受けするからです。

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(注)クレジットには、削減回避系(avoidance)と吸収除去系(removal)がありますが、削減回避系クレジットについての話になりますので、ご留意下さい。
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その質問とは、例えば…..

非化石証書を購入しても、自社の排出量をオフセットできないのですか?

ここで「オフセットとは….」と説明したいところですが、グッとこらえて脇に置きます(笑)

つまり、「非化石証書(FIT/非FIT、グリーン電力証書かと想像します)」と「カーボン・クレジット」を同一のものと思っているところ、「でも、使えないんじゃ?」という知識が、横から囁いているのでは?

分かっているようで分かっていない、その違い。
「決定的」に違います。

証書は電気や熱の属性を証明するもので、再生可能エネルギー(再エネ)由来の電力量・熱量を 「kWh 」や「 kJ」単位で認証し、購入者は他者から供給された電力や熱の属性を、別途調達した証書で上書きするもの。

日本自然エネルギー株式会社ウェブサイトより

もう少し簡潔に説明すると、再エネ電力は、「kWh」という電力本来の価値と、「GHG排出ゼロ」という「環境価値」の2種類の価値があり、後者を「証書」という形で、切り分けて販売するものです。(以降は、電力について説明します)

日本自然エネルギー株式会社ウェブサイトより

ですので、化石エネルギー由来の電力を使用していても、証書を購入することにより、仮想的に「再エネ由来の電力」を使用していることになる、電力の使用による排出量の削減につながるのです。

もちろん、発電所の建設や、オフサイトであれば送電ロスによる排出はあります。これらについては、スコープ3カテゴリー3で算定します。

カーボン・クレジット・レポートより

ここまで説明すると、SHK制度に基づいて報告する際に、証書の使用は、他社から購入した電力の使用に伴って発生する排出量からのみ控除できることは、理解できるのではないでしょうか。

SHK制度における非化石証書の利用について より

再エネ電力の「環境価値」が「証書」ですから、その他のガソリンや重油などの使用による直接排出分まで控除するのは、おかしいですよね。

ちなみに、電気事業者別排出係数に加え、都市ガス・熱の事業者別排出係数も公表されることになりました。

SHKにおけるグリーン証書の扱いの見直しと 経過措置について より

これに併せて、「熱」証書の取り扱いも代わりますので、ご注意下さい。

ガス及び熱の調整後排出係数算出方法

他方、クレジットは、ベースライン排出量とプロジェクト排出量の「差分」を「CO2e」単位で認証するものです。

オフセットに利用した場合、「クレジットを創っているところでは減ってるから、その分を自社が「代わり」に減らすだけなのでいいのでは?」との声も聞こえてきそうです。

しかしながら、減ってはいるものの「排出」はしているのです。証書は「排出していない」という「環境価値」を切り出したものでしたので、この点において「明確」に違うのです。

また、オフセットができることで、自助努力による削減に対して、ディスインセンティブとなることも懸念されます。

これが、「クレジットと証書の違い」によって、前者が使用できず、後者が使用できる理由です。

なお、オフセットする場合、クレジットを創っている側(販売する側)は、オフセットの反対に「オンセット(加算)」する必要があります。

このことを、相当調整(Corresponding Adjustment:CA)と言います。

しかしながら、ボランタリーなクレジットの売買では義務ではなく、購入側のみが「オフセット」し、双方が「自社の排出量」として報告すると、ダブルカウンティングが発生します。

温対法における報告は「法律」であるため、クレジットの販売側は「オンセット」することがSHK制度に定められています。(様式の中に記入欄があります)

ということで、「証書はカーボン・クレジットとは違うよ」という警鐘を鳴らしたところで長くなってしまいました。

次回は、個人的な「異論」を述べさせて頂いた上で、証書の種類や算定方法などについて、ご案内しようと思います。

「分かってるよ」という方も、お付き合い頂けますと幸いです。

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