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算定実務者悩みどころ

算定は毎年行って行きますので、否が応でもスキルは向上していきます。
なので、疑問質問といった悩みどころは減っていくかと思われるところ、実は逆に増えてしまう、といったことを経験している方も多いのでは?

というのも、当初は言葉の意味すら分からず、算定ルールも分からず、使用するデータが何か、社内のどこにあるかも分からず、といった「何が分からないか分からない」状態から始まります。

以前からサステナ担当であれば、GHG排出量の算定に限って学んでいけばよいのですが、全くの他部署から配属されたのであれば、押し寄せてくる、環境イニシアチブの開示要請や環境インデックス・格付機関等からのアンケート、社内外の各種レポートなどの波に圧倒されることでしょう。

ですが、知見が高まると、さらに詳細が見えてくることもあり、今ままでスルーしていたことが気に掛かるようになることが普通にあります。疑問質問の質が変わってくるんですね。

だからこそ、私は、算定の代行は基本的に行わず、伴走を旨としています。そして、「分からなくなったら、そもそもの目的に立ち戻って考えて下さい」とアドバイスします。「合目的的に考える」ということです。

折に触れご案内しておりますので、参照頂ければと思います。

今回、算定支援を行っている中で、いくつか皆さんの参考になりそうな質問をお受けしましたので、ご紹介しようと思います。

お悩み事はこちら。

住宅をリノベーションして販売する事業を行っています。
どの排出係数を使ったらよいのでしょうか。

話を伺っていると、論点が2つあるようでした。

1.スコープ3カテゴリー1なのかカテゴリー2なのか
2.適切なリサイクル材の排出係数が無い

すぐに販売できるものはカテ1で算定し、当面見込みの無いものはカテ2で算定しようと思っているとのことでした。

リノベーションした住宅は、会社にとって製品です。その対象となった「住宅」は「購入した製品」ですのでカテ1。それを、リノベーションする際に排出する排出量は、スコープ1・2で算定です。

なので、「1」の答えは、「どちらでも無い」となります。

もし、リノベーション住宅を、販社や代理店を通じて販売しているのであれば、その取引先に提供する排出量は、上流(Cradle-to-gate)の排出量となり、調達した住宅の排出量にスコープ1・2を加えたものになります。

こちらの会社は、積極的に排出量削減に取り組んでおり、リノベーションに当たって、極力リサイクル材を活用しているとのこと。だからこその質問が「2」なのですが、残念ながらその通りです。

というのも、リサイクルした場合のベネフィットを、排出側が享受するのか、使用側が享受するのか、明確なルールが無いからです。

社内でリサイクルする(クローズドリサイクル)であれば問題ありませんが、他者が利用する場合は簡単ではないことは、お察しの通り。

しかし、全く考慮されていない訳ではありません。

排出する側は、環境省DBの「廃棄別」係数では、処理方法別の係数が示されていますし、利用する側は「産連表」に、鉛・亜鉛とアルミニウムのみですが「(含再生」という区分の係数があります。

有料になってしまいますが、IDEAでは「再生プラスチックペレット」「再生塩ビ床材」「再生合板パネル」など、リノベーションに使用する可能性がある製品の係数も含んでいます。

ですが、網羅されているとは到底言えない状態。となると、「削減するためには、活動量を減らすしか無い」という、算定お決まりの堂々巡りの議論になってしまうのです。

しかし、リノベーションが社業である以上、新築住宅との比較において、排出量の削減が謳えないと、意味がありません。だからこそ、再生材等を活用して、削減を推進しているのです。

であれば、最初は精緻で無くとも構わないので、係数に頼らない算定に着手するのが吉。自社でシナリオを作って算定することから始め、サプライヤーにも一次データの提出をお願いしていく。誰もやっていないからこそ、やる意味がある。このように、お伝えしました。

危機機会に変えましょう

私が大好きなフレーズです。
結局、誰もが通らなければならない道。
覚悟を決めて一歩を踏み出し、先行者利益を享受していきましょう。


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