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岡安咲耶 ピアノ・リサイタル ~西と東のエッセンスを集めて~

『岡安咲耶 ピアノ・リサイタル ~西と東のエッセンスを集めて~』に伺いました。(2022/04/17@Hakuju Hall)

 岡安咲耶さんは桐朋女子高等学校音楽科、同大学在学中に渡仏し、CRR Paris(パリ国立地方音楽院) 最高等課程卒業、その後フランス国家上級音楽研究資格取得(DEMS)し活躍中のピアニストです。プーランクの唯一の弟子であるガブリエルタッキーノや巨匠 エリック ハイドシェックにも学び研鑽を積んできました。ウィーン古典派、フレンチバロック・印象派、正統派から知られざるマニアックな現代曲、邦人作品を得意とし、枠にとらわれない、個性的で実験的なプログラムや演奏が好評を博しています。 

このコンサートは当初2020年4月の開催を予定されていましたが、2021年5月の再延期を経てついに実現しました。岡安さんのコンサートは深い見識から生まれる独特のプログラム構成、高い技術から醸し出される表現の多彩さの魅力に詰まった特別な音楽体験を味わうことができます。 

古典的なクープランの楽曲に始まり、親しみあるモーツァルトを経てドビュッシーにつながっていくと、ある大きなストリーを旅するような不思議な感覚に浸ることができました。それぞれの楽曲の間に拍手を受ける間を持たずに演奏を進める姿勢にも、岡安さんの意図があったように感じました。

副題に「~西と東のエッセンスを集めて~」とあるように、後半は三木稔や伊福部昭の楽曲を交え、サティやベルギーの作曲家アプシルなどが取り上げられました。三木稔や伊福部昭の作品では岡安さんがこれらの作品を大事にしているのが伝わる高い完成度の演奏でした。ギナーが作曲をした、立体的なものを意味する「アッサンブラージュ」といった近現代の楽曲は、激しいパッセージの明滅が刺激的で、繰り返し聴きたくなるような作品です。演奏の見事さが特に鮮烈でした。そして、最後に聴くシューベルトの即興曲を聴くと夢から覚めるような、もしくはトンネルから抜け出るような安堵と幸福感に満ちる不思議な感覚に陥りました。 

考え抜かれたプログラムの構成、岡安さんの知的で温かみのある音楽解釈が心の底からライブの愉しみを沸き上がらせてくれた素敵な演奏会でした!

▼セットリスト
クープラン:クラヴサン曲集 第2巻 オルドル第6番“神秘的なバリケード”
モーツァルト:ピアノソナタ 第16番 K.545
ドビュッシー:6つの古代碑
ショパン:バラード第2番
三木 稔:夏の叙事詩より“七夕”
伊福部 昭:ピアノ組曲(盆踊り・七夕・演怜・倭武多)
サティ:グノシエンヌ第3番
アプシル:7つの大罪より(奢り・妬み・貪欲・憤怒)
ギナー:アッサンブラージュ2より
シューベルト即興曲 作品90-2

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