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現場のよきパートナーとして財政課ができることとは —オンライン特別講演会「変革期にある財政課」

年々厳しさを増している財政状況のなか、自治体財政の命運を握る財政課の皆さんは、その重責を背負いながら必死にやりくりをされています。
一方、直接住民と接する原課の皆さんは、目の前の住民の要望に応えるため予算の確保に必死です。
そんな財政課と原課、それぞれの正義がぶつかってしまうことで予算編成に苦労されている自治体職員の方は多いのではないでしょうか。

そんな皆さんの悩みや課題の解決の糸口とすべく、4月17日にオンライン特別講演会「変革期にある財政課」を開催しました。
当日は「財政の見える化」で職員の意識改革を実行し、財政課と原課の協働による予算編成に奮闘した横浜市役所の安住秀子氏を講師に迎え

  • 横浜市の一般財源の90%を使っている100事業を見直すことで財源が生まれるのではいか?といった仮説のもと発足した「100大事業の分析・評価」のお話(ちなにみ、横浜市の事業数は約2000。5%の事業で財源の90%が使われています。)

  • 一件査定から枠配分方式へ移行し、その後「要求審査型予算編成」「自立・分権型予算編成」「配分調整型予算編成」を経て現在の「協働型予算編成」となった過程のお話

  • 審査資料を簡略化するなど市長審査の方法を変えることで超過勤務を抑制したり、副市長審査、財務部長審査を導入することで業務の効率化を図ったり、など予算編成業務を見直したお話

など、興味深いお話しをしていただきました。

今回は講演内容の一部「令和時代の財政課」についてのお話をご紹介します。

※本講演は会員限定で全編アーカイブ動画を公開しておりますので、動画視聴をご希望の方は下記までご連絡ください。
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はじめに


こちらのスライドは、R2.9に開催された一般社団法人地方行政調査会研修会「コロナ禍から学ぶ地方行政のIT戦略への影響と課題」(講師:長谷川文雄)の資料より抜粋したものです。
これを見ますと、今後10~20年で自治体の窓口業務や公務員などを含む広い分野でAIへの置き換えや業務内容の変更が予想されています。
一方でAI関連や企画立案、相手がAIでは得られないサービスなど、まだまだ人の手が必要な業務もあります。

現状では、政策主導の審査をしている財政課が多く、財源が足りているか、いないのか、といった計数整理が主な業務になっている自治体も多いと思います。
しかし、これからの財政課はAIに置き換わるような計数整理ではなく、人間にしかできない企画立案の部分に注力するよう変わっていく必要があると思います。
そこで、今日はこれからの財政課が審査の時に必要となってくる5つのポイントを紹介します。

0.変化を把握する


まずは前提として、データを把握しながら、これまでの変化をしっかりと把握することから始まります。
例示のスライドでは人口や世帯構成のデータを示していますが、こういったデータや社会情勢の変化を捉えながら審査をしていくことが必要です。

1.要求の確認①_使い切り予算からの脱却


令和時代の財政課は、ただ単に審査をするのではなく、色々と思考をしながらの審査が必要だと思います。特に使い切り予算からの脱却は重要です。
例えば、単年度で見がちな事業を、10年スパンで見てみるんです。
管理費など、将来一定程度の財源が見込まれていれば、事前に準備をするといった意識で原課に要求してもらえるよう、複数年度で考えるよう促します。
また、「決算で余った財源を一旦、財政調整基金に積み立てて、それを翌年度の予算に使いましょう」といった年度間調整は、段々と回らなくなってくるので、こういった意味でも複数年度で考えることが大事です。

2.要求の確認②_さよなら、縦割り予算


現在の部署では行政評価を担当していることもあり特に感じますが、部署を超えた類似事業は結構あります。
ですが、現状では一人ひとりに担当部署を割り当てて、それぞれが自分の担当の範囲で審査することが多いので、担当範囲を超えた類似事業に気づくことが難しくなっています。
とは言っても、待っているだけでは情報は集まってこないので、他分野にも関心を持ち、積極的に情報収集する姿勢が大切です。
すると、原課に他部署との連携をアドバイスするなど横の連携も意識した審査ができるようになります。

3.要求の確認③_他の自治体とタッグを組む


この写真は横浜市を含む近隣8市の連携市長会議のものですが、1つの自治体では実現が難しいような事業でも、複数の自治体で連携すればできることがあります。
また、原課が気づいていない国の補助金など生かせる財源の情報は財政課から原課に伝えてあげましょう。

4.要求の確認④_事業の賞味期限の見つけ方


一度始めた事業の見直しは難しいです。
なので、これから始める新規事業は3年程度のスパンで見直すなど、事業を見直す仕組みをあらかじめ設定しておくことが重要です。
また、財源の10/10が国補助で始まったモデル事業などは比較的気軽にスタートしがちですが、お金の切れ目が事業の切れ目とならないよう、補助が終わった後のこともしっかりと考えておく必要があります。

5.要求内容の確認⑤_5類移行後の事業の組み立て


事業を始める時は0か100かで決めがちですが、最初からいきなり最終形を目指すのではなく、その過程で状況に応じた対応ができるよう、途中途中で変更するパターンも想定した設計にすると事業が進めやすくなると思います。
また、今後、新型コロナウイルスが5類に移行することで臨時財源で運用していた事業の予算を一般財源で要求するケースが増えると思うので、今から継続する事業、やめる事業の見極め、準備しておきましょう。

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