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【後編6冊】 歌人必読!? オススメ理科本

理科と短歌を愛する評者が、好きな理科本を歌人目線で紹介します(難しさは評者の体感です)。

前編 https://note.com/consida/n/na1faff26af81



次元とは何か (難しさ ★☆☆☆☆)

「この世界は9次元空間だ」?「立体的な世界は幻にすぎない」!?……最先端の科学が予言するSFのような世界の姿。言葉では分かりづらい内容もイラストでイメージできます。

現代短歌において、世界の見方を鮮やかに変えてくれるような歌は人気を集めやすいように思います。本書を読めば世界が違って見え、人をあっと言わせる歌ができるかもしれません。


白百 (難しさ★★☆☆☆)

現在の noteロゴ も手がけたデザイナーによるエッセイ集。理科本ちゃうやん!そうなんですが、科学的なテーマの話が特に魅力的です。例えば「結晶」の項では、文明誕生の遥か前から自然界に高度な秩序が存在することを改めて思わされました。

自然界や都市の美を見つめ、理知的かつ叙情的に表現する作者。理知は叙情を妨げず、むしろ高めることがわかって、作歌の励みになります。


量子力学で生命の謎を解く (難しさ ★★★★★)

コマドリの渡りやサケの航海、そして私たちの体の中にも、量子力学が潜んでいる……驚きの説が、豊富な例とともに繰り出されます。宇宙論との関連が深い量子力学ですが、意外に身近な学問でもあるようです。

自然や自分を見つめて詠む歌人は多いかと思います。それらが量子力学を介して宇宙と繋がっていると思うと、ますます深い歌になりそうです。帯には 新海誠 さんの推薦文が載っています。


マンガでわかる電磁気学 (難しさ ★★★☆☆)

光は写実詠の強力な味方ですが、電磁気学の法則に支配されています。本書は電磁気学について「ハチャメチャな科学者が平凡な大学生に講義する」という設定で楽しく教えてくれます。写実詠に新たな光が差すかも!?

回転寿司・羊羹・流れるプールなど比喩が多彩で、比喩に慣れた歌人にとっては読みやすいと思います。同じくオーム社から出ている マンガでわかる量子力学 もオススメです。


科学をうたう (難しさ ★☆☆☆☆)

科学的な視点で生活や社会を見つめた短歌が紹介されています。医療・エネルギー・環境保全など社会的なテーマを詠んだ歌が多く、単に「科学をうたう」のではなく「科学を通して社会をうたう」といった趣があります。

元新聞記者の筆者の解説からは広い教養が溢れ出しており、正確性にも万全が期されています。巻末で収録歌集を調べられるのも嬉しいポイントです。


人工知能はなぜ椅子に座れないのか (難しさ ★★★☆☆)

AIの限界や可能性について、人間とも比較しながら、豊富な具体例を用いて論じています。本文は縦書きで、数式は無く、数学と親しくない方にもオススメです。

生活に急速に溶け込み、「人間とは?」「心とは?」といった問いを突きつけてくるAI。驚きや期待や不安を込めて歌に詠まれることも増えてきました。AIの本質を知ると、ひとあじ違ったAI短歌が詠めそうです。


お読みくださり、ありがとうございました。