頼むから11月22日までに全人類「ゾンビランドサガ」7話を見てくれってだけ

何も言わずに見てくれるならそれでいい。

知らない人には“MAPPA×エイベックス・ピクチャーズ×Cygamesが贈る新感覚ゾンビアニメ”っていう「ゾンビランドサガ」について話すから聞いてくれ。

ものすごくざっくり言うと、ゾンビとして蘇った7人の女の子が佐賀県を救うためにアイドルとして頑張るっていう感じ。少なくとも今の時点では。

1話は、メインヒロインであろう源さくら(CV本渡楓)がトラックに衝突されて、気が付けばゾンビィとして佐賀にいたっていうハチャメチャ展開。彼女はろくに生前の記憶もないまま推定プロデューサー・巽幸太郎(CV宮野真守)の勢いにのまれて、何だか分からないなりにアイドルとして活動を始めていく。

1話では突然のデスメタル、2話では突然のヒップホップ、3話はゲリラライブという名の駅前ストリートライブ。視聴者も彼女たちも何だか全然分からないけど、幸太郎がセッティングするままにアイドルとして頑張っていく。画面にちらほら映るのは実際に佐賀にある色んな場所らしいので、まあそういうほのぼのご当地アニメみたいになるのかなとぼんやり見てた。

そこが大きく変わったのが4話。口では観光といいながら、超真面目にプロデューサーとして営業活動していた幸太郎。サロンパスとかの久光製薬(本社は佐賀県鳥栖市)とか、ホテル華翠苑(佐賀県嬉野市)とかのネタを交え、アイドルたちが少しずつ絆を深め、ゾンビのホラーっぽい要素も押さえ、とても「新感覚ゾンビアニメ」としてキレイにまとまっていた。

そして5話。そういえばこれもMAPPAだったなと思いつつ、フィギュアスケートアニメ「ユーリ!!! on ICE」にはお馴染みらしい「ドライブイン鳥」でのアイドル活動。やたらと棒な人がいるかと思ったら有浦定幸社長、佐賀県庁の近野顕次さんがガチで登場するというガチっぷり。ところどころモザイクかかった実写映像も入るし、山田たえ(CV三石琴乃)渾身の雄叫びもヤベエ。

それだけでも結構重かったのに「ガタリンピック」とかいう佐賀ではメジャーらしいイベントにも参加するフランシュシュ(※彼女たちのアイドルグループ名)。実は今年、声優陣も参加してらしく、ゾンビランドサガ関係とは明かされないままニュースになってたようで、後々になって「あの時、これに参加してたのはそういうことだったのか!」と謎の伏線回収が起きたようでした。なんだこれ。

ここらへんでちょっと「もしかして、この制作陣は本気で佐賀を救おうと思っているのか?」と、こちらの気持ちも改めることになったんです。

そして、ここからさらに一歩、彼女たちが「ゾンビィ」であることに踏み込んでいく。公式サイトに没年月日があるように、彼女たちは比喩でなく本当に死んでいる。6話「だってセンチメンタル SAGA」では、彼女たちの生前の姿について迫っていくわけです。

何だかんだ知名度がアップしてきたフランシュシュ。そこで握手会やチェキ会を開いたり、サガロックへの出演が決まったりと、アイドルとして少しずつステップアップしていくわけです。アイドルとして活動していく上で、メンバーの中でも中心的な存在となるのが、伝説の平成のアイドル・水野愛(CV種田梨沙)、伝説の昭和のアイドル・紺野純子(CV河瀬茉希)の2人。この「伝説」というのは1話あたりで幸太郎が説明して、ほぼ全員に何らかの「伝説」というキャッチコピーがついていたわけですが、これが回収されるんです。

彼女たちの「死因」と共に。

純子も愛も人気や知名度が高まり、トップアイドルとして申し分ないところへあと一歩というところで死んでいたことが分かる。しかも純子は飛行機事故、愛はライブ中に雷に打たれて死ぬという壮絶なもので(ちょっと落雷はシュールだったけど)、そんなことがあったら「伝説」と後世に語り継がれていかれるレベルだよなと思い知らされ、ものすごいどんな顔していいか分からなくなった。

おまけに彼女たちの死因がゾンビとしての姿と密接に関わっていることも分かり、今からゆうぎり姐さん(CV衣川里佳)と星川リリィちゃん(CV田中美海)の死因が判明するのが恐ろしくてたまらない。

彼女たちの死因も気になるところですけど、それよりも6話の見どころはフランシュシュの分断の危機です。原因は昭和のアイドルとして生きてきた純子が、現代のアイドルとして当たり前の風習をどうしても頭でも感情でも理解できないということ。一方、愛はほぼ現代のアイドルに近い感覚でいるわけで、そこから意見が食い違い、純子はキノコが生えるまで閉じこもって悩み続けます。

やっと7話「けれどゾンビメンタル SAGA」まできたぞ。サガロックへの出演が決まって、練習に励むフランシュシュだけど、純子は部屋に閉じこもって出てきません。バリケードを作るのはゾンビじゃなくてゾンビに襲われる側じゃーーいっていう正論ぶちかます巽幸太郎はともかく、幸太郎が語りかけます。

以下セリフ引用。

“お前が生きていた時代から30年。時代は大きく様変わりした。えらく便利になったものもあれば、不便になったものもある。例えば情報端末の普及によって誰もが情報発信できるようになり、プライベートが隠しづらくなった。時に、アイドルの私生活もな”

“昭和では一大スキャンダルだった類のものが今は日常茶飯事で、ネットに垂れ流される。そんな危険にさらされながら、今のアイドルは活動している”

“そしてもう一つ、アイドルを取り巻く環境で大きく変化したのがファンとの距離だ。いつでも会えるアイドルの誕生が業界を一変させ、物理的な両者の距離は劇的に近づいた。あのチェキ会のようにな”

“だが、変わったものばかりじゃない。ファンに夢を与えたい。歌やダンスで笑顔になってもらいたい。アイドルの本質は今も昔も同じだ。もしも、アイドルになりたい者の志が低くなったと思っているのならそれは違う。時代が変わり、求められるアイドル像が変わったんだ。”

昭和と違うのは分かるけど……と、なおもためらう純子にさらに幸太郎は続けます。

“ならやらなければいい。チェキ会が嫌なら断れ。無理に迎合する必要はない。それが私のキャラだと言ってやれ。愛には愛の、純子には純子の個性がある。お前らはゾンビィだがロボットじゃない。この時代に、昭和アイドルの矜持をもって活動するその姿をメンバーやファンたちに見せてやれ”

“ただし、今それを個人でやるのは難しい。まじてやゾンビィであるお前には頼れるものがない。その尖った個性をカバーするゾンビィの仲間が必要なんだ。覚えておけ。フランシュシュは時代を超えて、互いの想いを支え合うために存在する。心を開けば、あいつらは必ずお前を助けてくれる。その時、お前があいつらにしてやれることを考えろ”

“アイドルならばステージに立て、紺野純子”

ここですっげえ格好良いこと言ったのに、その直後ぶっ壊したドアを直しておけとか、必死に飛び出してきた純子を車で跳ね飛ばすとか、そういうところがハチャメチャに巽幸太郎。でも“私は昭和のアイドル、紺野純子です”って叫んだ純子ちゃんがはちゃめちゃに格好良くて、アツい。あまりにもアツい。

そして雷に打たれたことが大きなトラウマになっていて、雷が鳴ると体が動かなくなってしまう愛を純子がステージでサポートする。3話とかもそうだったけど、これまでアイドルとして活動する時は周りを引っ張っていた愛を、純子が助ける。ここで純子も、ゾンビィだから雷に打たれても平気だった愛も、生前とは違うアイドルとして一歩進めたんじゃないかなと思いました。

それと、普段の純子ちゃんってめちゃんこ可愛い声なんですけど、アイドルとして歌う時はキャラよりもずっと低いんですよね。まさに昭和アイドルって感じ。いやほんとライブシーンめちゃくちゃ鳥肌たつし、雷って状況を使ってここでテクノっぽいアレンジver,かけるとか天才の所業としか思えない。

アイドルアニメとしても、あまりにも面白いぞ「ゾンビランドサガ」。

まだ他の子の死因もだし、7話ではねられた純子がピンピンしてたこと(ゾンビィだけど)もあって、さくらの死因がトラックとの衝突ではないんじゃ疑惑も浮上したり、誰かの生前の姿を知ってるみたいな意味深の記者も出てきたり、たえちゃんについてはマジで何も分からんし、まだまだ見どころあると思います。なので7話からでも!!「ゾンビランドサガ」を見てくれ!!

余談だけど、この幸太郎の語るアイドルというものについてがすごく深いと思った。インターネットが普及してきた20年くらい前、AKBが登場した15年くらい前、SNSが発達してきた10年くらい前、それからアイドルとか、それこそ俳優とか声優とかもアイドルを演じることが日常茶飯事みたいになってきてるし、ファンとの距離感や求められるものが変わってきたと思う。

そんな中、アイドルというわけじゃないけど色んなことに挑戦し続けて、そういう時代を生き抜いている宮野真守氏が語るからこそ、言葉の重みが違うなあと思った。アイドルという偶像を好きだからこそ、アイドルって何だろうってすごく考えてしまった7話だった。

本当にいいんですか?!ヤッターうれしい!