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ペプシじゃなくてコーラ

リモートワーク24日目。

B4のコピー用紙と消しゴム付きのHBの鉛筆。僕が企画を立てるときに、絶対欠かせないアイテムだ。どれだけデジタルのツールが便利になっても、それだけはどうしてもアナログにはかなわない。

僕の場合はまず、商品のセールス用のコピーを考えるなら商品名、リブランディングの仕事ならブランド名とそのキャッチコピーというように、紙の中心に大きく固有名詞を書く。そのあと、周囲の余白に店舗数とか歴史といった「ファクト」をどんどん書き出していく。ここまでは思考はあまり必要ないので、スイスイ進む。5分とか10分とか、そのくらい。場合によるけれど、B4の紙は3分の1くらい埋まってくる。鉛筆を削る。

さらに理念とかビジョンのテキスト、社長のコメントやキーマンのインタビュー記事の見出しなど、資料やWebサイトのリサーチだけで取得可能な「ブランドイメージやフィロソフィーに関わるっぽい情報」をざっくりと書き出していく。

少し変わったところでは、その企業やブランドの過去の広告のキャッチコピーの変遷などが、分析にとても役に立つ。なにしろキャッチコピーというのは、その時代ごとに広告会社やクリエイターが「外部の視点」からブランドを深く分析しトレンドを鑑みながら最適な「伝え方」を考え抜いたものなので、時代を追って並べてみると「企業の考え方の変遷」が一発で理解できるからである。

ここまでで、紙は3分の2くらい埋まっている。当然、鉛筆を削る。

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そして最後に「事前のインタビュー」で聞いた内容を細かく書き込んでいく。実はこの作業がアウトプットの精度や個性に一番深く関わってくる部分なのだけど、インタビューで得た情報を頭の中で細かく分解し、小さなパーツごとに、紙の上に書き出しておいた「ファクト」や「フィロソフィーに関わるっぽい情報」のどのジャンルに該当するかを考えながら、インタビューで得た似たような属性の情報をまとめて書き込んでいく。

ジェネラルな情報と自分が仕入れた情報とを「グルーピング」しB4の紙面上で直感的かつリアルタイムで「編集」していくことで、四方に散らばっていた情報がどんどん整理され(それはつまり自分の頭の中が整理されるということ)、自分だけの「ファクトシート」が完成する。

ここで、B4の紙はほぼ埋まる。すっかり先の丸くなった鉛筆をていねいに削って、キャップを締める。

さらに実際に企画を立てていく時には、そのファクトシートをベースに気づいたことをあれこれと付箋やマーカーで書き込んでいくのだけれど、とりあえず「消しゴム付きの鉛筆」の役目は一旦ここで終了になる。

そんなわけで「常に全体を俯瞰で見ながら情報を書き込みたい」「その場で書いたり消したりを繰り返したい」という2つのニーズに応えてくれるベストな組み合わせが「B4のコピー用紙と消しゴム付きのHBの鉛筆」なのだ。それに、だんだんと太くなっていく鉛筆の線の感じは僕の「脳みそ」が頑張ってくれた証みたいでなんだかチャーミングだし、ガリガリと鉛筆削りをする音はごちゃごちゃと絡まった思考をほどいてくれる気がして気持ちいい。どうしてもやっぱりそのあたりの「体感」の部分は、デジタルはアナログにまだまだかなわないと思う。

だから仕事を始めるときに「あの紙と鉛筆」が見つからないと、オロオロしながらそれらを探すのにいくらでも時間をかけてしまう。どうでも良さそうに見えて、どうしてもそれじゃなきゃダメなんだ。

「いや、ペプシじゃなくて"コーラ"ください。」

うん、つまり、そんな感じ。



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