リュートを携えて未踏の地へ
ここ数日、朝晩を中心に冷え込むことも多くなり、日中に散歩に出てもすっかり秋の風を感じるようになりました。
さて皆さま、しばらくご無沙汰しております。
7月そして8月と、夏休みの間にこちらの記事を更新できずにいたのは、この期間限定で週2ペースで収録していたラジオ番組(!)の編集作業に、PCに向かう時間の大半を費やしていたためです。
これからはまた、暇を見つけて投稿していきたいと思います。
ところで、夏休みに遠出して行う演奏の仕事では、バカンス気分がどうしても抜けません。
実際、周りの共演者たちもだいたいはそんな感じなので、自分だけ浮くということはありませんけども・・仕事ついでに、これまで未踏だった地に足を踏み入れるのは、毎回ワクワクします。
今回はこの夏で特に印象に残った仕事での訪問先を、現地での画像とともにいくつかご紹介していきましょう。
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まず7月の始めにはフランスに演奏旅行をしてきました。
自分の住むスイスの町と、すぐ国境を接するフランス。
何しろとても広い国なので、行ったことのない地方がたくさんあります。
ブルゴーニュ運河が流れる、ディジョン郊外の小さな村。
ここに集まって数日間ここでリハーサルしたあと、公演地に向かいました。
まるで絵に描いたような風景ですが、絵ではありません。
リハーサルの合間に川沿いを散歩してみると、気分転換に最高です。
そして本番の場所は・・
ロワール地方の田舎にある、中世の館です。
ここが16世紀フランス文学を代表する詩人、ピエール・ド・ロンサールの生家。
館の中のこちらの部屋で、歌手6人とリュートという編成で、ピエール・ド・ロンサールとその周辺の文学に関係するフランス音楽を演奏しました。
演奏者は自分以外フランス人だったのですが、ここはアクセスが悪いのでよほどの物好きしか訪れないスポットらしく、彼らはこちら以上に終始興奮した様子で、写真を撮りまくっていました。
この館の前は広大な庭で、ここで日没(このときは22:00過ぎ)の頃までのんびりと主催者たちとともに食事。
地元のワインが美味しかった!
館越しに見る夕焼けが、とても綺麗です!
ほろ酔い気分で涼しい夜風に当たっていると、決して誇張でなく、
「生きてて本当によかったな・・」と思いました。
だいたいこういう特別な場所に、一人ではまず来られないのです。
まことに、ルネサンス音楽好き冥利に尽きるひとときでした。
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さて、7月の後半は人生初のアイルランド上陸を達成!
キルケニーという古い町で、これまたこの城の塔の中の一室(この写真では左側)が本番の会場でした。
自分にとって始めてのアイルランドでの演奏会、本当に貴重な体験でした!
腹が減っては戦が・・ではありませんが、こちらがホテルの朝食、いわゆるフル・アイリッシュ・ブレックファスト。
ビュッフェスタイルではなく、オーダーして持ってきてもらう形式でした。
ひょっとして、結構格式が高い?
そのままスイスに戻るのはもったいないので、そこから丸2日間はダブリンを観光することに。
「♪ハーレルヤ!」のコーラスで有名な、ヘンデル作曲のオラトリオ『メサイア』の初演地が、ロンドンではなくダブリンだったことは、ご存知でしょうか?こちらがそれを記したプレートです。
残念ながら、『メサイヤ』初演場所の建物は残っていませんでした。
名高いトリニティ・カレッジの旧図書館。
始めてのダブリン滞在で、ここはやはり外せないと思います。
中央のガラスケースの中に大事に展示されているのは、アイルランドのシンボルにもなっているハープ。
今さらながら言うと、今回の訪問の真の目的は、アイリッシュ・ハープの協会イベントでのリュートの演奏でした。
アイルランドで入った教会では、どこでもこうしてケルト紋様に由来するタイルがあったのが印象的でした。
ケルト紋様とともに、濃い緑色もアイルランドのアイデンティティを示すものなのですね。
最後にダブリンといえば、ナイト・ライフ。これはテンプル・バーのカウンターです。
いろいろな銘柄を試したかったので、毎日最低3杯ほどは飲んでいました。
ギネスなどはいわば「蔵元直送」ですから、当然現地で飲む方が安いしうまい!
フランスでもワインを結構飲んでたので、この夏だけでちょっとアルコールに強くなったかも。
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さてこの夏の最後の遠出は、オランダでした。
先ほどの2か国のように前々から決まっていたわけではなく、本番数日前に急遽代演という形で向かいました。
飛行機ではなく、ドイツを縦断する形で電車を乗り継いで・・これがまたなかなかの苦行。
エイゼル湖に面するクレイユという村の教会。
一帯は20世紀になってから開かれた、比較的新しい干拓地です。
主に農業を営む住民たちが、オランダ政府の農地政策に抗議して、国旗をアムステルダムの方に向けて掲げているのだそうです。
オランダに、現在進行形で「農民一揆」があるとは。
ここを含めた複数の村がこの音楽祭の舞台になっていて、お客さんたちはいくつかの組に分かれて、順にバス・ツアーで回るというしくみ。
演奏者の我々はずっとこの教会に釘付けで、午前から午後にかけて同じ日に三公演と、けっこうハードでした。
ルネサンス期のフランスのシャンソンを中心に演奏しました。この手のレパートリーの常として、歌詞の内容がややきわどいものもあったかな?
滞在先のホテルの周りは、こうしてひたすら平坦で畑・畑・畑。
これぞ、典型的なオランダの風景ですね。
今年のヨーロッパは全体的に高温で、各地で渇水が問題になっています。
7月の半ばにドイツにいたときに、日中気温が40度を超すことがあって死ぬかと思いましたが、アイルランドといいオランダといい、北のほうでは概して涼しかったので(20度前半!)、遠征の途中でバテることはなかったです。
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今回アイルランドが初訪問国だったわけですが、ヨーロッパで未踏の国はまだまだあります。
例えば、西ヨーロッパではポルトガル。
物価が安く食べ物が美味しいと周りではもっぱらの評判。
なのに今のところ、行くチャンスには恵まれていません。
中央ヨーロッパでは、スロベニアとスロヴァキアがまだ行ったことがなく、私の好きな音楽に関係する場所で訪れたい場所がたくさんあるだけに、早く訪問を実現させたいものです。
あと北欧では、ノルウェーが子供の頃に一度行ったきりなので、寒さが厳しくない時期に機会があれば行ってみたいです。フィンランドはヘルシンキの空港だけならしょっちゅう降り立ってますが・・やはりこれらの物価の高い国々は、仕事以外で行くとなると少々ハードルが高い感じがします。
もはやヨーロッパ各国間では、コロナによる移動制限が実質なくなったので、その気になればスイスからどこへでも行けます。
でも結局のところネックになるのは、お金と時間ですよね・・
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