見出し画像

能傍タルツの実話怪談コレクションその十八「現代筑前奇談考」-6月-『いなか、の、じけん』

現在では地名が変わっているが
筆者は福岡県の
京都郡豊津町という、
いにしえの国分だった
土地の生まれである。

「みやこ」郡と読ませる
ところからして
かつては北九州における
それなりの重要な位置を占める
場所であったのだろうか。

また、
北部九州はどこもだが
ここもまた、
むやみに古墳や土器が出土する
土地柄でもある。

そんな場所なら
いかにも怪談話が
ごまんとありそうな気もするが
筆者のリサーチ不足か、
実家にいたのは二十年くらいだが、
残念ながらそのあいだに
これといって特筆すべき話はない。

やれ、
どこどこの橋には
手まりのアレがでるとか、
どこどこでは村の誰々が
狐に騙されたとか、
古墳であった団地には
角髪を結ったナニがとか、
元々は海軍基地であった
自衛隊の宿舎ではアレとか、
どこにでもありがちな
出所のあやしい
いかにも陳腐な話ばかりである。

ただ、一つ覚えているのは
中学生の頃か。

その中学は
同じ地区内の幾つかの小学校から
生徒が集まるのだが
そのうちのT小学校。

実はそこの奥の
とある場所には
初代校長の剥製があり
夏場など臭くてしかたなかったと
同級生同士で話していたのを
耳にした事がある。

いくらなんでも
そんなことがあってたまるかと
思っていた。

ところが。
もちろんT小学校ではないが
イギリスの某学校に
校長の剥製は実際にあるらしい。
頭の部分は痛みが激しく
三回以上修復したそうだ。

なぜ、それが
半世紀近く昔の
田舎の小学校のこととして
伝わっていたのかは
未だによくわからないのだが。

まあ、そんな
他愛ない話に過ぎない。
これに限らず
昔の田舎なんてのは
今とは違い
汲み取り便所や肥溜めがあちこちにあり
異臭に満ちていた。
また、酪農家もけっこういたが
田んぼに死んだ乳牛を
不法投棄するものもいた。

筆者が中学の二年くらいか。
通学している県道の畦道に
大型犬の死体が
何ヵ月も放置されていたことがある。

当然、
周辺は凄まじい臭いだったが
誰も役所に通報などせず
平然と日常を送っていた。

それにしても
いかに万事が大雑把な
昭和時代とはいえ
いったい皆
どういう神経をしていたのだろうか。

筆者は近寄る気にも
なれなかったが
見たやつによると
「蛆虫の川」ができていたそうだ。
森林にブタの死体を放置した時と
同じ現象である。

そんなこの地区は
社会主義運動の先鋒であり
かの大杉栄とも一時親交のあった
堺利彦。
アイヌのシャクシャインの反乱を書いた
鶴田利也。
これまた無政府主義者であり
プロレタリア作家だが
怪奇作家でもあった
葉山嘉樹。

といった方々を輩出しているが
正直な話。筆者も含め
ろくな奴らをひり出さねえなあと
つくづく思う😂

(終わり)







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?