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能傍タルツの実話怪談コレクションその十二「現代筑前奇談考」-11月『うちんと』

ほいで、うちんと。
ウチの女房が亡くなった時たい。

葬式終わってから
俺はしばらく
何もする気が起こらんでからくさ、
毎日家でボーッとしよったとよ。
要するに
俺がこんなヤクザな人間やけん
結局、女房にも
何もしてやれんかった思うてね。

ほいだらくさ。
四十九日になる前やった思うけど
死んだはずのうちんとが
家ん中うろちょろしだしたとよ。

うん、火の元とか
戸締まりとかいろいろたい。
家ん中毎日見て回るごとなったと。

ほいでからくさ。
あれは仏壇の位牌が出入口になっとるとね。
トコロテンみたいに
しゅるん!っと出てくるんよ。

ん?
いやあ、会話やら成り立つもんか。
テレビやらに映った者に
話かけるんと一緒たい。

だけんくさ、
「おい!お前どうしたんか?
俺の言葉が聞こえんとか!」
言うても知らん顔よ。

何も気づかん顔して
一通り家ん中回ったら安心するんやろうね。
消えるたい。
位牌にしゅるん!と。
それが毎日。

うん、俺がこげんな風やし
心臓やらに持病もあろうが。
一人で生活できよるか
女房は心配なんやろうね。

ばってん
うちんとが迷いよるとは違いなかけん
参ってしもうてからくさ。

死んだ後にまで
俺の事で心配掛けるとが
気の毒で気の毒で…
そう思うたら
俺もたまらんけんねえ。

ほいでからくさ。
嫁いだ娘に相談したら
即座に
お父さん、ウチが良か霊媒師さんを
知ってるから言うてね。
拝んで貰うたらそれから出らんくなった。

ばってん
その時は凄かったばい。
ビカビカビカビカ光ってねえ。

ほら、うちんとの後に
あれが出てきたたい。
ほら、居ろうが。
あれたい、何やったかのう
度忘れしたったい。
あれは綺麗ぞ。
ビカビカビカビカ家ん中が明るくなる位
輝いて出て来ったい。
あんな別嬪な女は俺も始めて見た。

西先輩は
何の話をしているのだろうか?
(次回完結)





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