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最適化に基づく実用的な制御手法~モデル予測制御,MPC,RH制御~

ここでは,モデル予測制御について説明をします。略してMPC(Model Predictive Control)とも言いますし、RH制御(Receding Horizon制御)とも言います。通常、システムの制御は無限時間(もしくは十分長い時間)に渡って行われることになります。良い制御応答を実現する実用的な手法としてモデル予測制御が利用されます。
以下の動画では、その概要を簡単に説明しています。(2分程度)

モデル予測制御では、評価関数を設定し、その最適化問題を解くことで制御入力を決めます。最初のステップとしては、評価関数を小さくすること(もしくは大きくすること)と性能の良し悪しをうまく関連付ける形で評価関数を設定することになります。例えば、入力信号の二乗や誤差の二乗、誤差の最大値のようなものが評価関数に組み込まれる量の候補になります。また、それらを組み合わせたものを評価関数に組み込むことが一般的です。

評価関数の最適化という意味では、最適レギュレータやカルマンフィルタなども該当しますが、モデル予測制御で扱う対象はもっと広いです。制御対象は非線形性を含んだものでも設定可能であり、評価関数の構造も設定自由度が高いです。また、制約条件も組み込むことができます。この点で汎用性の高い制御手法と言えます。

評価関数の最適化は、通常その解を導出すること自体困難です。しかし、モデル予測制御では”有限の評価区間”での最適化問題を解くため、無限区間の問題を解くよりも実用上解きやすい(適切な解を選択しやすい)です。区間に渡っての制御入力を定めることから、評価区間が長くなると(感覚的には)線形的ではなく指数関数的に入力信号の組み合わせパターンが増えていきます。長くない区間での最適化問題であれば多少の問題としての難しさがあったとしても良好な解を得ることができます。

モデル予測制御では、各(離散)時刻ごとに最適化問題を解いて、その解のうち現在時刻のもののみ制御入力として利用し、次の時刻以降の解軌道は捨てます。次の時刻以降でも最適化問題を解いて入力解を得ることを前提としています。ずっと最適化問題を解き続けることで、制御入力を求めていくことになります。

この手法では、評価区間は短いほど解を求めやすく、長いほど大域的解に近い挙動の入力が得られる(ある種の)トレードオフがあります。評価区間は一定以上長ければ十分です、しかし、その一定値は制御対象の特性に依存します。評価区間を短くしすぎると逐次最適解を使い続けてるにも関わらず応答性能が悪くなり得て下手したら不安定化します。

制約付き最適化、非線形といった難点を有限区間問題に帰着させて逐次的に解くことで解決しており適用範囲はかなり広いです。適用範囲や仮定の理解が正しい使い方につながり、正しい使い方ができればかなり有効な制御手法であるというのがモデル予測制御に関する認識です。

以下では、モデル予測制御の解説記事を取り上げます。

児島晃 ・大塚敏之,モデル予測制御の考え方

(大塚先生は,京大の教授で,RH制御の実時間最適化に関する最有力な手法を提案されています。児島先生は、東京都立大学の教授です。)


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