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英語教育・英語学習に関する独り言41 ー 音声学について

本日(2024年4月30日)は神戸学院大学の某科目の代講だった。とはいえ、スペシャル・ゲスト(レディング大学の Professor Jane Setter)を招いての特別講義だったので、特にすることもなく、ほとんど講義を聴講するだけだった。せっかくなのでその内容を(自身の振り返りの意味も込めて)ここにものしておきたい。テーマは Phonetics and Global Englishes だった。

まずは Phonetics =音声学について。これは scientific study of speech のことで、以下の4つに分類される。

1.Articulatory Phonetics =調音音声学
2.Acoustic Phonetics =音響音声学
3.Auditory Phonetics =聴覚音声学
4.Linguistic Phonetics =言語音声学

Articulatory Phonetics とは発音の解剖学的な仕組みについて学ぶことを指す。たとえば「マ」という音を生み出すには唇を使うし、「ラ」という音を出すには舌を使う。「スー」という音を出す時には喉の振動は伴わないが、「ズー」という音を出す時には喉のあたりを振動させる。このような音と身体の発声器官の関係を調べる学問が調音音声学である。

Acoustic Phonetics とは音声の物理学的特性を分析する学問。bearaudio やソフトウェアの audacity のユーザーなら音の波形を見たことがあるはず。あれをもっと突っ込んで調べる学問が音響音声学である。

Auditory Phonetics とは Impressionistic Phonetics とも言い、音声言語の認識について調べる学問だ。簡単に言えば、リスニング力を分析する学問となるだろうか。「shut up はシャット・アップではなくシャラップと聞こえる。これはフラッピングと呼ばれ、他にも get away がゲラウェイのように聞こえたりする」というような説明を見たり聞いたりしたことがあると思うが、これが聴覚音声学的なリスニングおよび発音の指導例である。

Linguistic Phonetics とは様々な言語が異なるパターンを用いて意味を生み出す方法を科学する学問を指す。たとえば日本語は一語が一音を持ち、音節を一音レベルで区切られることもあるが、英語における区切りは必ず音節レベルになるか、あるいは一つの音(リズムと言い換えてもいい)に複数の音節を圧縮して乗せてしまう。手拍子しながら「うみはひろいなおおきいな」と歌ってみよう。日本語がいかに一音に一音節を乗せているかが実感できるはず。その後、同じく手拍子しながら

Birds eat worms.

を発話してみよう。Birds も eat も worms もすべて一音に乗っていることが分かるはず。さらに

The birds will eat the worms.

も手拍子ながら発話してみよう。The birds will / eat / the worms と一音に2単語あるいは3単語を乗せることもありうるのが分かるはず。

これはあくまでも Linguistic Phonetics の中でも stress timing と syllable timing の違いの例で、本当はもっと抽象的な概念があるが、学派によって色々とあるらしい。いずれにせよ、様々な言語が独自の音声パターンを持っているということを分析する学問であるということだ。

他にも Global Englishes の歴史的成立過程として、Jamestownが出てきたりして面白かった(Jamestownは定期的に TOEFL で扱われる)。英語の世界への伝播は主に First Diasporas と Second Diasporas によって行われ、イングランド西部の方言がアメリカのニューイングランドの標準語になったり、オーストラリアの英語の基礎はイングランドからの16万人の流刑者たちによって築かれたという概論は非常に興味深かった。

他にもインドやスリランカ、シンガポールなどで独自の進化を遂げた英語についての動画やレクチャーも面白かったが、ここらへんの詳細は割愛。2023年度の前期に大阪の某私立大学の Academic Reading という科目で『 BBC:英語ものがたり 』というテキストを使用したが、英語がどのように世界で受容され、またどのようにメディアや世界史的な出来事(戦争など)と相互作用して変化・進化してきたかを知るには同書を読むといいだろう。

大学で教えていると時々このような特別講演に参加できる。これはかなり役得だと思う。が、もうそろそろ他部署に異動で、この仕事からはいったん離れるかも・・・?

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