ラメ入りポスカの思い出

 小学3年生の時。クラスの女子たちの間で、ペン集めが爆流行りしていた。どんなペンかって?『平成女児』で検索したらいっぱいでてくると思うよ。
「ペンをたくさん持っているヤツほど強い」「香りつきペンやラメペンを持っているヤツほど強い」という価値観で、3年4組女子の社会はまわっていた。
 普通の筆箱の他に、色ペンだけを収納する筆箱も持っている子が多かった。私も筆箱を2個持ちしていて、りぼんの付録のポーチ(筆箱に見えなくもない)に収集した色ペンを入れていた。休み時間の度に友達同士で筆箱を見せ合って楽しんでいた気がする。当時はそれが最上級の娯楽だった。
 ただ、派手なペンを持ってくると、男子に「学校に関係ないものを持ってきている」とチクられて、先生に怒られるので、バランス感覚も必要だった。

 私はちゃんと流行にのっていた。ド素直だったので、みんなが「良い」と言ってるものは私も「良い」と思ってしまう。そんな女児だった。
 最初はディズニーキャラクター柄の香りペンを集めていた私だったが、ある日運命のペンに出会った。それは友達が持ってきたラメ入りポスカ(水色)だ。
 まず、発色が良い。今まで私たちが持っていたラメペンは見た目のインパクトの割に、描いた時のキラキラ度は微妙だった。だが、ラメポスカ(水色)はレベルの高いキラキラ水色をオールウェイズだしてくれた。とても綺麗な色だったと記憶している。そして、書きやすい。見た目もちゃんと文房具だったので、男子にチクられることもない。革命だ。
 ラメポスカ。値段が女児には高かった(一本200円以上)こともあり、一気に3年4組ペン集め界隈の頂点に君臨した。もちろん、私もラメポスカに憧れた。文房具屋においてある全7色セット(1500円くらい)をながめて「いいな〜」と思う日々。

 そんな話を母にしたら、なんと。サンタさんからもらえたのだ。ラメ入りポスカ全7色セットを。
 当時の記憶はおぼろげだが、多分嬉しかっただろう。多分友達に自慢しまくっただろう。全色持っているのはクラスで私だけだったから。
 ……と、同時にこの日からはじまった。クラス中の女子からの「貸して」「貸して」「貸して」ラッシュが。仲良くないカースト上位の女子たちからもよく要求された。
 私はド素直な性格だったので、みんなのお願いを断らなかった。「全色持ってるの私だけだし、恵んでやらないとな」という気持ちだったと思う。(上から目線だなぁ……)
 当時、昼休みの間に連絡帳を書かないといけなかったのだが、その度に誰かにポスカを貸していた。連絡帳を色ペンでかわいく書くのも流行っていたのだ。
 特に、青色のポスカは使われすぎてバグるようになってきた。5回に1回ほどインクがバフッと大量にでるようになり、連絡帳に青ラメのシミを作ってしまうのだ。さすがに貸し出し禁止にした。
 
 放課後、忘れ物(給食着だった気がする)を教室に取りに戻った時。隣の教室から女子たちのお喋りが聞こえてきた。悪口大会をしている様子だ。うちのクラスのカースト上位女子たちもいる。今考えたらベタすぎる状況だな。
「てかさー◯◯は4組にムカつくヤツいる〜?」
 なんちゅー問いだよ。怖。そう、奴らは悪口で結束を固めるタイプの女子群だった。
 知ってる子の悪口が次々出てくる。「あいつは?」「◯◯なとこがムカつく」「あいつは?」「△△なとこがムカつく」の連鎖。そしてついに、私の名前も飛び出した。
「むらさきふも(私の名前)は?」
「むらさきふもは……」

「むらさきふもは、ポスカ貸してくれるからいいや」
 
「そっかー」
 そのまま話は流れた。私の悪口は聞こえてこなかった。私は気づかれないようにこっそり学校を出た。
 
 ポスカを貸しただけで、カースト上位女子に嫌われずに済んだ。くだらなすぎて、記憶に強く残っている。
 その時はゆかいな気分だったけど、人間って嫌だなあとも思いました。って宿題の日記に書きたかったが、トラブルをまねくのでやめた。

 その後、クラス内でペンの窃盗トラブルが起きたため、赤ペン以外の色ペンを学校に持ってくるのが禁止になった。せっかく、ポスカが私の武装になるとこだったのに。
 おそらく、私の悪口はめちゃくちゃ言われるようになったと思う。


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